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若手官僚、10年で23%退職 待遇不満、早期転身視野も

国家公務員の幹部候補である総合職(キャリア官僚)として2014年度に採用された約600人の23.2%が、この10年間で退職したことが11日、人事院のまとめで分かった。給与水準や長時間労働への不満が背景にある。入省当初から、早期の転職を視野に入れている人も増えているという。
 調査は23年度末時点。退職時期でみると、採用者全体の8.6%が採用後5年未満、14.6%が6年目以降の退職だった。5年を過ぎてから辞める人が急増する傾向があるという。  
5年前の19年度採用の場合、13.4%が退職していた。14年度採用と比べ、早期に退職する傾向が強まっている。  
また、23年度1年間の退職者のうち、採用後10年未満だったのは203人。前年度比26人増で、過去最多を更新した。  
24年4月に採用した総合職へのアンケートによると、職場の魅力向上へ、給与水準の引き上げや働き方改革を求める声が多かった。
(共同通信 1月11日)

キャリア官僚を就職10年以内に辞めるのは、多くの場合、長時間労働を強いられる割に賃金水準に恵まれないとは受け止めていることにある。コストパフォーマンスに見合わないと考えているのだ。
賃金水準の引き上げはノンキャリアや民間企業とのバランスを踏まえれば、容易に着手できない。着手しやすいのは長時間労働の是正である。
「令和6年度における人事管理運営方針について」には、是正策に①業務の廃止を含む徹底的な業務見直し・効率化を確実に推進する ②業務の進め方に ついての指導、適切かつ柔軟な業務分担や業務の優先順位付け等、超過勤務縮減に向けた改善 方策に取り組むことを徹底する ③勤務間 のインターバルの確保について、フレックスタイム制や早出遅出勤務の活用等を通じて組織的に取り組む――などが記載されている。
 いずれも実施されれば長時間労働は是正されるだろうが、キャリア官僚の離職には別の要因も潜んでいるのはないだろうか。
キャリア官僚になる学生は、政策策定など国家のグランドデザインを描きたいという志を抱いているのだろうが、いまや学生のうちから転職先を想定して最初の職場を選ぶ人も珍しくないそうだ。これもキャリア設計のひとつのパターンだが、国家公務員志願者のなかにもセカンドキャリアを想定する学生もがいたところで、なんら違和感はない。
しかも「元キャリア官僚」というブランドには転職市場で高い値が付き、賃金だけでなく、移籍する先々で経営幹部のポストが用意されつづけるのが通例だ。この実態を見据え、若年での天下りや渡りを意図して国家公務員に就職する人が、少なからずいるかもしれない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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