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「ユニクロ」展開のファストリ、初任給33万円に

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは8日、新卒の初任給を現行の30万円から33万円に引き上げると発表した。年収は約10%増の500万円強となる。また、国内正社員の年収を3月から最大11%引き上げる。初任給や賃金を引き上げる動きが拡大しており、報酬体系の見直しで優秀な人材の確保を図る。
 新卒の初任給を引き上げるほか、多くの社員が入社1~2年目で就任する新人店長の月収は39万円から41万円とする。年収は約5%増の約730万円となる。
 報酬体系の見直しは、本部や国内店舗で働く正社員約1万4000人が対象となる。一律の引き上げではなく、能力などに応じて引き上げる。優秀な人材を抜てきする人事も積極的に行っていくという。
 正社員以外の時給の見直しも実施した。ユニクロやジーユーの販売員については、昨年11~12月に、最初の時給を最大1700円まで引き上げた。
 ファーストリテイリングは、2023年3月にも年収を最大4割引き上げるなど人材への投資を強化している。今回の報酬体系の見直しで、国内の総人件費は7%増える見込みという。(読売新聞オンライン 1月8日)

 初任給引き上げについて、ファーストリテイリングは「日本以外の世界各地でも、弊社の報酬体系が小売業にとどまらない全産業ベースで十分に優位性のあるよう随時、見直しています」と方針を示す。
 柳井正代表取締役会長兼社長は「グローバル水準の少数精鋭の組織へと変革を進め、企業としてさらに成長するために、新しい報酬体系を改めて導入するとともに、世界水準で働く意欲や能力のある優秀な人材の抜擢を強化します」と述べたうえで、「パート・アルバイトから経営者に至るまで一人ひとりが高い目標を持って挑戦を続け、成長と賃上げの好循環を推進できるよう、今後も報酬を含む組織のあり方を継続的に見直していきます」と表明する。
 いよいよ初任給30万円時代が到来しつつある。三菱商事は2024年4月入社の初任給を32.5万円に設定し、25年4月に初任給が30万円を超える企業は、大和証券グループ本社、三井物産、伊藤忠商事など。26年4月には三井住友銀行の初任給が30万円を超え、東京海上日動火災保険は転勤と転居を伴う場合の初任給を最大約41万円に増やす。
 初任給が30万円の場合、賞与を夏冬合わせて6カ月と仮定すれば、新卒入社1年目の年収は540万円。給与所得者の平均年収である約430万円をはるかに上回る。
これだけの初任給を支給できるのは一部の大手企業だろうが、それでも30万円超えの企業が名乗りを上げつづけ、「初任給格差」が顕著に開いてゆく。そんな機運になりそうだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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