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中高年、スタートアップへ 転職8割増

40代以上のスタートアップへの転職が目立ってきた。人材大手のエン・ジャパンによると2024年は22年比8割増で推移している。資金の流入で給与水準が高まり、従来は難しかった「やりがい」の追求に現実味が帯びる。経験やノウハウを新天地で生かそうと中高年が動き出した。
「まだ活力もある。これまでの経験を新しい分野で生かし挑戦したいと考えた」。大型蓄電池などを開発するスタートアップ、パワーエックス(東京・港)に勤務する男性(53)は今年6月、大手自動車メーカーから転職した。
 前職には25年以上勤務し、米国法人で調達担当の副社長を務めた。パワーエックスでの役割は調達部門のリーダー。「在庫管理や交渉など調達業務を一通りやってきた経験が生きている」という。
 エン・ジャパンが運営する転職サイト「ミドルの転職」などを通じて40代以上の新興企業への転職件数を調べたところ、24年(1~7月)は2年前の同時期比で78%増えた。30代(61%増)や20代(53%増)を上回った。
(日本経済新聞 12月22日)

 50代に入った人は退職金を計算すれば定年までつつがなく現職で過ごしたほうが現実的――これが従来の普通の考え方だった。いまでも、そう考え、割り切る人は多いのではないのか。
 一方で、ミドル世代での転職が増加傾向にあるが、大きな理由は転職によって給与が上がるようになったことだろう。ひと昔前までミドル世代が転職する場合、給与は現状維持なら御の字だったが、いまでは違う。
 リクルートエージェントによると、50代の転職理由1位は「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(34.5%)が圧倒的に高いが、割り切って関われないほど容認できないのだろう。しかも上司や経営者に合わせるために、自分の考え方を改めることが自己否定につながりかねない年代である。もはや職場を変える以外になく、給与がダウンしても転職する。
2位以下は、「給与が低かった」(27.3%)「年収を上げたかった」(27.3%)「昇進・評価が不満だった」(18.2%)とつづくが、給与が上がるから転職する実態が反映されている。
 ミドル世代の強みは、ノウハウ、人脈、バランス感覚などだが、要は若手に還元できる知見をどれだけ持っているかで市場価値が決まる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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