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時間外・休日労働100時間超の医師7人、145時間も…鹿児島市立病院

鹿児島市立病院が、職員の時間外労働に対し、割増賃金を支払っていないとして、鹿児島労働基準監督署から5月30日付で是正勧告を受けていたことが分かった。同23日付で改善指導も受け、病院は過去6カ月分を実態調査し、7月15日までに報告する。「時間外労働と確認できた場合は賃金を支払いたい」としている。20日の市議会産業観光企業委員会で病院が報告した。
 市立病院によると、現在のシステムでは、出退勤記録を職員が自らパソコンで入力する。労働時間と30分以上の差がある場合は、理由をシステム上で自己申告し、上司が決裁している。  
指導では、労働時間と出退勤記録などとの間にある相違の原因を合理的に説明できないと指摘。職員への聴き取りなどの実態調査や、未払いがあった際の支払いを求めている。時間外労働として計上しない理由を「自己研鑽(けんさん)」としているケースも部署によって多数あり、「適正な労働時間管理が行われていないと判断される」としている。  ほかに時間外・休日労働が1カ月当たり80時間を超える医師が19人、100時間以上が7人(最長145時間)いるとして、過重労働への対策を求めている。「過労死ライン」は月100時間超、または2~6カ月平均で月80時間超とされる。
(南日本新聞 6月20日)

 医師の働き方改革が波紋を呼んでいる。時間外労働時間の上限は病院機能などによって、
A水準(年間時間外労働時間の上限960時間)、B水準(年間時間外労働時間の上限1860時間・高次救急医療施設やがん拠点施設)、C水準(同1860時間・特定高度技能研修者の雇用施設)に分類されている。
外科系学会社会保険委員会連合(外保連)が6月17日に都内で開いた記者懇談会で、働き方改革が外科診療に及ぼす影響について、外保連の瀬戸泰之会長(国立がん研究センター中央病院長)は「一番懸念しているのはB水準(年間時間外労働時間の上限1860時間・高次救急医療施設やがん拠点施設)とC水準(同1860時間・特定高度技能研修者の雇用施設)を申請した病院が500施設未満であること」と指摘した。
「厚生労働省は1000施設を超えると予想していた聞いた。申請しなかった病院は上限を960時間以内に抑えなければならないので、それ以上働くことをやめるか、あるいは本来は働いているのに働いていないことにするグレーな状況になるか。この2つを懸念している」
働き方改革がもたらす課題に「時間外の仕事に制限がある人が多く、仕事量に偏りが生じる」「時間外労働と自己研鑽の判断がますますグレー になっていく」「外科系や時間外が多い部署の希望者が減っている」「事務や他のメディカルスタッフの業務増加」を挙げている。
こうした課題を前静岡県立総合病院長の小西靖彦順天堂大学特任教授は憂慮している。
「若い外科医は、技能と態度を極めてプロフェッショナルになろうとする気持ちが強く、上長の指示などによることなく、職場でも職場外でも自己研さんをしている」と現状に触れ、「働き方改革は、若手外科医の育成にマイナスに働く」と明言した。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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