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技能実習生の派遣機関、厚労省が初の現地調査へ…半数超が来日前に借金

 厚生労働省は2023年度、日本に派遣される外国人技能実習生の高額な費用負担や人権侵害の実態を調べるため、各国の送り出し機関に対し、初めての現地調査に乗り出す。少子化による人手不足が進み、円安で日本で働く魅力も低下する中、実習生への不当な扱いを是正しなければ人材確保が難しくなると判断した。
 技能実習制度は、日本で働きながら様々な技能を学んでもらう国際協力の名目で行われ、実習生は21年10月時点で約35万人いる。実際には就労目的の人が多いが、低賃金などを理由に失踪するケースが後を絶たず、21年は7167人に上った。政府は失踪の要因の一つに実習生が抱える多額の借金があるとみている。
 出入国在留管理庁が21~22年に実習生約2180人に行った聞き取り調査では、実習生が現地の送り出し機関などに支払った費用は平均約54万円に上り、半数超が来日前に借金していた。費用の名目は、仲介業者への紹介料や日本語の事前教育費などで、「不明」と答えた実習生もいた。厚労省は、費用の実態を解明するには現地調査が必要と判断した。
(読売新聞オンライン 1月1日)

 技能実習生を送り出す相手国の送出機関は各国の認定制で管理監督されるという建付けだが、管理監督が機能不全に陥っている。実習生の多くが多額の借金を背負って来日している事実から、それは明らかだ。
数年前、技能実習生活用のシンポジウムで演者を務めた厚生労働省の担当官に、参加者が「日本の監理団体に対する指導を強化できても、相手国の送出機関が健全化しなければ技能実習制度は改善されない。送出機関に対して日本側が指導できないのか?」と質問した。担当官の回答は「日本政府の行政権は相手国には行使できない。相手国の行政機関に依頼するしかない」。苦笑いした表情は実態を改善できないという限界を示唆しているようだった。
読売新聞の報道によると、現地調査は民間の調査会社に委託するという。強制力をともなう調査はできないだろうから、自己申告をまとめた報告書が提出されないとも限らない。まして送出機関から管理団体へのリベートを調査するには、税務当局か関与しないと裏を取れない。
要は、技能実習制度は受入側がコントロールできない制度である。健全に運営するにはどんな方策を講ずるべきかという課題を立てても、空回りするだけだろう。制度を抜本的に改めない限り問題は解決しない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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