2021/08/26
ワタミの渡辺美樹会長兼グループ最高経営責任者(CEO、61)が12年ぶりに社長に復帰することが分かった。23日の取締役会で正式決定し、10月1日付で会長兼社長に就任する。清水邦晃社長兼最高執行責任者(COO、51)は代表権のある副社長に就く。新型コロナウイルス禍で外食事業が苦戦する中、経営責任と執行責任を創業者の渡辺氏に集中し、業績改善と中国などの海外展開を急ぐ。
社長交代に合わせて組織体制も変える。CEOとCOOの職制を廃止し、清水社長が担っていたCOO業務を分散。居酒屋や宅配弁当、唐揚げ店をはじめとしたファストフード、海外事業など8つの事業領域それぞれに事業責任者を配置して事実上のカンパニー制へ切り替える。各事業に.独立した意思決定権を持たせて、出店戦略の策定や新業態開発などのスピード感を速める。
渡辺氏が社長に就くのは会長に就任した2000年以来となる。(中略)21年4~6月期連結決算は、営業損益が20億円の赤字(前年同期は37億円の赤字)と、4~6月期としては2年連続の赤字が続く。
(日本経済新聞 8月18日)
創業者が経営再建のために代表取締役に復帰するのは、経営状況を危急存亡の秋と受け止めて、起業家としての手腕が必要と判断したからだろう。
古くは1964年、家電品販売を巡るダイエーとの「ダイエー・松下戦争」や全国の販社・代理店との関係悪化に直面した松下電器産業で、会長だった松下幸之助は営業本部長代行を兼任して第一線に復帰した。
2000年以降の例では、05年にファーストリテイリング会長の柳井正氏が社長に復帰して会長兼社長に就任した。後任社長の玉塚元一氏(現ロッテホールディングス社長)について、柳井氏は著書『成功は一日で捨て去れ』で述べている。
<玉塚君は同年配の若い経営チームのメンバーを引っ張っていけそうだし、チャレンジ精神が旺盛だと思ってバトンタッチしたのですが、彼の人柄や育ちの良さのせいか意外と安定成長志向でした。突っ込んでいかなければいけないようなチャンスに、思い切って挑戦しなかったりした>
13年にはファンケルで創業者が社長に復帰した04年に代表取締役会長から取締役会長に異動した池森賢二氏が、代表取締役会長執行役員に就任した。
創業社長の後任社長はいかに有能でも、あくまで創業社長の敷いたレールを走っている。この差は埋めようがなく、事業規模を拡大した創業者ほど後任が見つかりにくい。「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する壱番屋の創業者・宗次徳二氏(現特別顧問)のように、引退して異分野で活動している人は滅多にいない。
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