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裁量労働、違法適用多数=割増賃金不払いや制度外就労―厚労省調査

厚生労働省は7日、あらかじめ想定した「みなし労働時間」の枠内で自由に働く裁量労働制について、制度を採用する全国の事業者による自主点検結果を公表した。
休日・深夜労働に対する割増賃金の不払いや、制度対象外の業務への就労など法令や指針に違反する恐れがある事例が多数判明し、厚労省は今後、監督・指導を通じて是正を図る方針。
自主点検は今年2~5月、裁量労働制を導入している全国1万2167事業所で実施。1万793事業所から回答を得た。問題事例のうち、事業の運営など会社の経営に関わる「企画業務型」では、対象外業務への就労が回答全体の2.7%、74件で最多だった。上司から日常的に指示を受けるなど、労働者側に裁量権がない事例が2.5%、71件で続いた。
また、デザイナーや金融機関のアナリストら高度な専門性を要する「専門業務型」では、みなし労働時間などを定めた労使協定を周知していない事例が4.9%、389件で首位だった。長時間労働も4.4%、354件に上った。
(時事通信 8月7日)

裁量権を与えられていない社員に裁量労働制を適用すれば、違法事例が多発するのは当然である。むしろ多発しないほうが不自然だ。
裁量労働制は“定額・働かせ放題”を可能にする制度だから、労働時間や対象業務の規制を遵守する姿勢が吹き飛んで、野放し状態を招きかねない。休日・深夜労働に対する割増賃金の不払いも、定額・働かせ放題と企業が思い込んでいるから発生するのである。
これは市場原理でもある。企業に是正を求めても、一定期間が過ぎれば元の木阿弥である。
ただ、法令違反を繰り返す企業は、とくに若年層や女性から相手にされなくなっていく。我が身に跳ね返るのだが、この現実に気づく企業は意外に少ない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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