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企業に社外取締役を3分の1以上置く―政府提言

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政府は21日にまとめた対日直接投資の報告書で、各企業に社外取締役を3分の1以上置くよう提言した。
株主の視点で経営を監視することで、海外に比べて低い日本企業の収益性向上につなげ、海外からのM&A(合併・買収)の資金が集まりやすくする。社外取締役を義務付ける対象については上場、非上場の企業を区別していない。

 まとめたのは「対日直接投資に関する有識者懇談会報告書」。
1月の経済財政諮問会議での安倍晋三首相の指示を踏まえ、早大教授の浦田秀次郎座長のもと、外資系企業の経営者らから意見を聞き、要望を整理した。
 
日本が投資対象として魅力的な国になるには、企業の収益性改善が必要と強調。
法人税引き下げや規制緩和とは別に、日本の企業統治に関し「従業員、取引先などの様々な利害関係者の立場が複合的に考慮されるため、外国企業に比べ透明性に欠け、企業の収益率の低さの一因」と指摘した。

 報告書作成に携わった委員の1人は「生え抜きの役員ばかりだと、海外から条件の良い買収の申し出があっても、自社を防衛する経営判断に傾きがちだ」と話す。社外取締役も経営に携われば、株主の視点を強く意識できるようになるとみる。(日本経済新聞 4月22日)

 透明性を向上させる目的で社外取締役を配置するのは、一般論としては望ましいが、株主視点が強調されれば、企業はマネーゲーム愛好者たちの玩具に成り果てていく。
日本の産業界はこの通弊をさんざん経験し尽くしたのに、まだ懲りないようだ。
マネーゲーム癖は麻薬のようなもので、愛好者たちは「企業の信用のバロメーターは時価総額である」と口にするが、これは信仰の域に高まっている。

 その意味で、彼らにとってはヨダレの出るような「対日直接投資に関する有識者懇談会報告書」であろう。
 この記事には、委員が「生え抜きの役員ばかりだと、海外から条件の良い買収の申し出があっても、自社を防衛する経営判断に傾きがちだ」と報告されているが、役員が投資家から自社を防衛するのは当然の責務である。
良い条件の買収よりも、自社の社員を守ることを優先する。これは、役員が持つべき当然の理性である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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