2025/02/28
社内トーナメントを勝ち抜いた秀才経営者はカリスマに勝てるのか。気になるデータがある。
カリスマ経営者は創業者が多い。野村アセットマネジメントによると、創業者が社長の上場企業は自己資本利益率(ROE)が2000~24年平均で11.6%だった。内部昇進の社長の6.2%を大きく上回る。
PBR(株価純資産倍率)もそれぞれ5.12倍、1.55倍だった。稼ぐ力で2倍弱、株式市場の評価で3倍強の差がつく。時価総額上位1000社を調べた。
(中略)
ただ、カリスマ依存には危うさもある。日産自動車は16年にカルロス・ゴーン元会長が会社を去った後、経営不振に陥った。船井電機は08年に創業者が社長を退任した後、赤字体質に陥り24年に破綻した。後継者が育たず、稼ぐ力を失った。
一握りのカリスマには頼らない。
09年3月に巨額赤字を計上し、経営危機に陥った日立製作所。再建に向けて「社長バンク」を作り出した。勝ち抜き戦で一人を選び出すのではない。経営ノウハウを身につけた人材をリスト化する。時代が求めるトップを取締役会が「引き出す」仕組みだ。
(日本経済新聞 2月19日)
大手企業には次世代の社長を担い得る人材が揃っているので、「社長にとって最も重要な仕事は次の社長を育てること」という考えが成り立つ。サクセッションプランを運用する企業も多いが、日立製作所のようにリスト化も有効な方法だろう。
従来は、あるいはいまでもそうだが、営業で実績を上げるか、製品開発で実績を上げるかなどレースを勝ち抜いた人が最終勝利として社長に就任する例が多い。エビデンスに基づく人選だから正当な方法である。そのうえで、今後の重点戦略を見据えて、社長に求められるスペックに合致した候補者を社長に選任すればよいのだが、あくまで大手企業だからこそ可能な選考方法で、中小企業にとっては一般論に過ぎない。
60代後半を過ぎた中小企業の社長に聞くと、自社を一代限りの個人事務所と割り切っている場合を除けば、社員の雇用や取引先との関係を踏まえて事業承継を意識している。しかし後継者を確保していない場合は「社長として働けるうちは働きつづけたい」と話す人が多い。
たとえば退任したら毎日やることがなくなってしまう。部下に全面的に仕事を任せたら質が低下して、途端に業績が悪化してしまう。これからは生涯現役の時代である――などの理由が複合的に絡み合っている。
さらに中小企業の事業承継には時間を要する。ノウハウと人脈が社長に一元化されているからで、承継期間に3~5年を要することが珍しくない。それだけに50代のうちに承継計画を固めておくのがよいのだが、脂が乗り切った年齢だけに関心が向かないようだ。
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