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賃上げ「中小企業の労務費、価格転嫁を」 大阪政労使会議

大阪労働局は17日、2025年の春季労使交渉に合わせて行政と労使の代表が話し合う「大阪政労使の意見交換会」を大阪市内で開いた。物価上昇を背景に、さらなる賃上げが必要であるとの認識を共有した。一方で、中小企業の間では賃上げの原資とするための製品・サービスの値上げが十分にできていないとし、価格転嫁をさらに進める必要性があるとした。
意見交換会では、サプライチェーン(供給網)全体を見渡して、1次下請けや2次下請けになるほど労務費の増加分を価格転嫁できていない現状を示すデータが紹介された。参加したメンバーから、価格転嫁を後押しする支援策が必要との意見も上がり、大阪労働局や近畿経済産業局などが具体的な支援策を説明する場面もあった。
意見交換会に出席した厚生労働省の鰐淵洋子副大臣は「持続的な賃上げの定着は重要であり、政労使が一体となって取り組むべきだ」と述べた。
(日本経済新聞 2月17日)

中小企業にとって賃上げ実現の焦点は、今春も引き続き価格転嫁である。納品先との力関係や今後の取引方針など当事者間の問題であり、しかも納品先もコストダウンに迫られているためにスムーズに解決できない。政府や業界団体が声高に実現を訴えても、空回りしがちである。
そこで価格転嫁を実現させた事例を。中小企業取り上げたい。基盤整備機構が運営する経営支援情報ポータルサイト「J-Net21」に紹介された澤村商店(東京都台東区)の取り組みである。同社は封筒製造販売・紙製品製造販売を行っているが、おもな原材料の紙に加え、口糊、セロファンなどが15%以上値上がりするなど、原材料費の高騰によって採算性が悪化していた。
同社は取引先の執行役員に値上げを打診し、取引先が原価費上昇などの情勢を理解していることを確認した。そして材料費などの直接費だけでなく、決算書と損益分岐点分析などの資料を開示したうえで、社内では時間管理・多能工化による作業時間の短縮化やECサイト開設など経営努力を図っていることも説明した。
交渉を数回重ねた結果、加工賃5%強の値上げが実現した。さらに社内では時間管理などの効率化策を推進して、対売上人件費比率を3%以上削減でき、黒字転換も果たしたという。
取引料金引き上げ要請の根拠となるデータを用意し、社内での効率化の取り組みも報告したことが価格転嫁を実現できた要因である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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