2025/01/23
「じゃあおまえは何故(なぜ)サラリーマンを選んだんだ」
1983年に連載が始まった漫画「課長島耕作」(著・弘兼憲史、講談社)で、出世争いから距離を置こうとする大手家電メーカー課長の主人公に対し、同僚がこう問いかける。
会社員は出世を望むべきで、その登竜門が管理職。高度経済成長やバブル景気に沸いた昭和時代は、そんな風潮が根強かった。「出世のためなら苦労も我慢」と考える会社員が半数超に上ったという調査結果もある。
近年は価値観が一変しつつある。パーソル総合研究所が2022年に行った調査では、18か国・地域で管理職になりたい会社員は、日本が全体平均(58.6%)を大きく下回る19.8%で、最下位だった。
理由の一つに業務負担の増加がある。少子高齢化により、生産年齢人口(15~64歳)は、この30年で1000万人以上も減り、人手不足が深刻化した。
長時間労働を是正する「働き方改革」も進み、部下の業務を管理職が肩代わりするケースが相次ぐ。産業能率大学の23年の調査では、「プレーヤー」を兼ねる課長は94.9%に上った。(読売新聞オンライン 1月11日)
メンバーシップ型人事にあっては役職による序列が会社員の値打ちを決めるといえなくもないが、ジョブ型人事が進めば、序列による上下関係よりも専門スキルに値打ちが移行する。役職は役割であり、上下関係を意味しなくなる。
だが、ジョブ型人事が普及する以前から、役職が上がれば給与と権限は増えるが、上司と部下の調整などわずらわしい負担も増え、割に合わないと考える風潮は強まっていた。とうに「出世レース」という言葉は風化している。
この風潮を裏付ける最新の調査結果を確認しておきたい。エンゲージメント向上を支援する組織改善プラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」を運営するスタメン(東京都千代田区)は、2024年11月、中間管理職1366名を対象に、中間管理職の負担に関する調査を実施した。
明らかになったのは負担の大きさである。94.9%の中間管理職が「他の役職と比較して負担が大きいと感じている」と回答し、74.0%が「働き方改革の浸透に伴い、改革の実施後、中間管理職の負担が増えている」と回答した。負担の内容は「部下の業務のフォロー」「上司や経営層とのコミュニケーション」「部下とのコミュニケーション」などである。
この負担をAIで解消できれば中間管理職をめざす人は増えるだろうか。
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