Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

保育士の処遇改善 人件費、過去最大の10・7%引き上げへ

三原じゅん子こども政策担当相は22日の記者会見で、政府がまとめる経済対策に、保育士の処遇改善を盛り込むと明らかにした。「人件費を過去最大となる10・7%引き上げ、現状からの大脱却を図る」と語った。「すべての子供や若者の幸せと未来を守るとの決意のもと、子供、若者の支援・子育て支援などの取り組みを思い切って強化、加速していく」とも述べた。
 令和6年1月の保育士の有効求人倍率は3・54倍で、全職種平均の1・35倍と比べ、高い水準で推移している。一方で、厚生労働省が平成25年に実施した保育士資格があるのに保育士への就職を希望しない人たちへの意識調査で、就職を希望しない理由についての質問(複数回答可)では「賃金が希望と合わないこと」が47・5%で最多だった。三原氏は処遇を改善することで「現状から大きく脱却して飛躍的に前進させる」と話した。
(産経新聞 11月22日)

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均年収は約397万円。年代別にみると、20代は約352万円、30代は約397万円、40代は約426万円、50代は約439万円、60代456万円。年齢が上がるにつれて平均年収も上がっているが、横ばいに近い。
経験を重ねても収入がほとんど上がらない現状では、離職を防ぎようがないのではないだろうか。
東京都の調査では、保育士の離職理由で最も多いのが「給料が安い」(61.6%)、次に「仕事量が多い」(54.0%)だった。割に合わないと判断されていのだ。こうなると勤務先は慰留したくとも手の打ちようがない。
 欧州では保育士の賃金水準は教員と同水準だが、それは保育士が教職に分類されているからで、日本では福祉職に分類されているから賃金水準が低い――そんな背景を聞いたことがある。確かにそうなのかもしれないが、福祉職に対して失礼な見方ではないのかという印象をもったものだ。
処遇改善は今回に限らず、何回か重ねる必要があるだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。