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上場企業の役員報酬1億円以上509社1120人

 賃上げが進んだ2023年度(2023年4月期-2024年3月期)に役員報酬1億円以上を開示した上場企業は、過去最多の509社(前年475社)で、対象も1,120人(同995人)と初めて1,000人を超えた。
 また、上場企業3,229社(純粋持株会社を除く)の従業員の平均年間給与(以下、年間給与)は、633万7,000円(中央値609万9,000円)で、2010年度以降で最高を記録した。
 役員報酬額トップの7&iHDのジョセフ・マイケル・デピント取締役の報酬額77億3,200万円と従業員給与(年間給与818万8,000円)の格差は944.3倍だった。
 役員報酬額トップは、7&iHDのジョセフ・マイケル・デピント取締役の77億3,200万円(前年37億8,700万円)で、開示制度が始まった2009年3月期以降で歴代2位の高額報酬となった。
 従業員年間給与のトップは、M&A仲介のM&Aキャピタルパートナーズの2,478万円(前年3,161万3,000円)で、10年連続トップ。年間給与1,000万円以上は86社(前年64社)に増えた。
 役員報酬額と従業員の年間給与の格差は、7&iHDが944.3倍だったほか、年間給与トップのM&Aキャピタルパートナーズ中村悟社長(報酬額12億6,400万円)は従業員の年間給与の51.0倍だった。
(東京商工リサーチ 10月17日)

人事院の「民間企業における役員報酬(給与)調査」(2023年)によると、社長の平均年収は、従業員3000人以上が8602.万円、1000人以上3000人未満が5275.万円、500人以上1000人未満が4225万円だった。1億円超には株価連動型報酬が導入されているのだろう。
 経営学者・元法政大学大学院教授の坂本光司氏によると「小企業等においては約600万円から800万円であるが、中企業になると高まり、約1000万円から2000万円が一般的である」(アタックスグループ運営のコラムサイト)という。
 その昔、社長の年収は新入社員の7倍が相場といわれた。社長は新入社員の7倍働くというのが根拠だった。7倍を基準にすると上場企業社長の年収は高すぎて、中小企業社長は低すぎるが、適正水準はどのぐらいなのだろう。
 坂本氏は次のように主張する。
「社長が社員の2倍働く分は、深夜や土、日、祝日もあるので、2×1.5(割増賃金)で3倍となる。つまり、社長は新入社員の3倍プラス3倍で6倍働いていることになる。常識的に言って、社長の給料は大企業・中小企業を問わず、高くても、新入社員の6倍程度ということになる。その意味で言えば、億を超える年収などは、どんな事情があるとはいえ、あり得ない金額ともいえる」(同)
 さらにこう提言する。
「もしも自分の給料(年収)を6000万円にしたいならば、新入社員の年収を1000万円にすべきといえる」(同)
 ただ、オーナー社長の場合、個人保証を負っているので、新入社員の何倍働いているかという基準のほかにも大幅な加算が必要だろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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