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技能実習生の転職、要件明確に 失踪者は過去最多、対策強化へ

劣悪な職場環境などが原因で勤務先から姿を消す外国人技能実習生が相次いでおり、政府は10月にも対策強化に乗り出す。法務省関係者によると、2023年の失踪者は速報値で9753人に上り過去最多を更新。職場を移る「転籍」が原則認められず、増加の一因とされてきた。運用要領を見直し、パワハラやセクハラを受けた場合は転籍可能などと明記する。
ここ数年で失踪者は増加傾向にあり、20年は5885人で22年は9006人だった。法務省関係者によると、23年の失踪者を国別でみると、最多はベトナム5481人、ミャンマー1765人、中国816人と続いた。半数近くが建設関係の仕事をしていた。  
技術移転を名目とした技能実習制度では、同じ職場で集中的に働き技術を習得してもらうため、原則3年は転籍できない。出入国在留管理庁は運用要領で「やむを得ない事情」があれば転籍可能とするが、内容が曖昧との指摘があった。
入管庁は要領を見直し、やむを得ない事情の内容を明確化させる。悪質な法令違反や契約違反があった場合を明記する。
(共同通信 9月16日)

 外国人労働者に対するパワハラは証拠や証言の確保が難しく、うやむやにされがちである。被害者が失踪してしまえば「なかったこと」で終わる。
特定非営利活動法人・移住者と連帯する全国ネットワークが整理した外国人労働者が遭遇するパワーハラスメントは、身体的な攻撃に「人種、民族、国籍等を理由とした身体的暴力 」「日本語能力不足等を理由とした身体的暴力」。精神的な攻撃に「暴言・人種、民族、国籍等に対する差別的言動、侮辱」「日本語能力の不足等を理由とした精神的暴力」「在留資格の更新への協力をしない等在留資格喪失をにおわせること。帰国を強要すること」。
人間関係からの切り離しに「職場で、母国語(日本語以外)で話すことを禁止すること」「日本人従業員との会話を禁じること」「技能実習生を本人の意に反して帰国させること」。
さらに「勤務時間以外に使用者の私的な用務に従事させること」「日本語能力の不足を理由に業務から外すこと」「差別的に残業させず、他の者に比べて収入減少をもたらすこと」などを挙げている。
2022年1月には、岡山市内の建設会社で働くベトナム人技能実習生が、職場の同僚などから2年間にわたって繰り返し暴言や暴行を受けて、出入国在留管理庁・厚生労働省・外国人技能実習機構が実習実施者と監理団体に充てて「技能実習生に対する人権侵害行為について(注意喚起)」と題する文書を発出した。「技能実習法違反が認められた場合には行政処分を行う等厳正に対処していく」と明記した。
技能実習生を含めて外国人労働者をめぐる環境は、国が掲げる多文化共生社会には程遠い現実がある。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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