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“静かな退職” 当事者に聞く働かない理由「頑張っても給料が上がらない…」

“静かな退職”が広がりを見せている。仕事への熱意を持たず、必要最低限の業務のみをこなす働き方を差す言葉だが、いまや60%が“静かな退職”を実行中だという。
 社会人3年目のえりさん(20代)も、「仕事はできるだけサボった方が勝ち。頑張ったとしても給料は変わらない」との持論を持つ。新入社員の頃から「パソコン打ってる感」を出したり、「作業してます感」をだしたり…。  
そんなえりさんは、入社数カ月で休職届を出し、いまも休職中だ。身体の不調は無いが「病院で“適応障害”の診断書をもらって提出し、今は会社に全く行っていないが給料の8割をもらっている。『会社側が原因で病気にさせた』ことになっている。働かないでお金がもらえてラッキーだ」と話す。  
えりさんは「会社はクビにできない」と話すが、実際に企業が社員をクビにするのは難しい。労働基準法第16条では「客観的に合理的な理由」が条件とされていて、全く働く気のない社員でも解雇は難しいという。
(ABEMA TIMES 8月25日)

がんばっても給料が上がらない――10年近く前に取材した介護施設の施設長は、認知症予防プログラムや介護ロボットなどを同業者に先駆けて導入し、先進的な施設運営を行なっていた。この施設長は業界プロパーではなく、たぶん異業種の民間企業出身ではないのかと思ったら、そうではなかった。  
前職は自治体の福祉系外郭団体職員で、民間企業に勤務した経験はないという。介護施設への転職理由を聞くと「前職の団体は仕事で成果を上げても、さぼっていても、年功序列の給与体系だったので、入職年次が同じなら給料が同じで、一生懸命に働く意味がなくなってしまった」という。
人事評価をめぐる不公平感を解消するのは、評価基準を明確にして、評価者の主観を排除して適正に運用することに尽きるが、それが有耶無耶になると成果を上げている社員に見放され、退職されてしまう。意欲のある社員は怠惰な日々を送ることがでない性分で、成果の追求がタダ働きになってしまう職場での勤務は、キャリアの放棄にも等しいと認識する。
その一方で、がんばっても給料が上がらないのならば、手を抜きながら適当に取り繕って働けばよいと割り切る人も少なくないだろう。キャリアのゴールが見えた中高年社員ならばそれでもよいだろうが、若い社員が手を抜くようでは自身の将来にツケが廻ってくる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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