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地方の外国人材、転出意向強く 技能実習生も流出懸念

地方の外国人材や留学生のうち、就職・転職時に今住んでいる地域に残りたいと望んでいるのは半数未満であることが民間調査で分かった。地方は大都市以上に人口減が深刻で、労働力確保には外国出身者が欠かせない。企業や住民と連携し、つなぎ留めを図る自治体の動きも出てきた。
長野県上田市では2023年、自治会や受け入れ企業などでつくる研究会が主体となり、技能実習が始まる前の外国出身者と地域住民らを集めた交流行事を始めた。
地域の風習を伝え、着物姿で名所を散策する。受け入れ企業の元役員で研究会副代表の土屋光弘さんは「顔が見える関係を築き、上田に愛着を持ってもらいたい」と狙いを話す。
市は実習生を含む外国人材の定着を図るため、日本語教育や交流事業に力を入れてきた。21年度に無料の日本語教室を始め、現在は十数人が受講する。大人と子どもでクラスを分け、講師がマンツーマンできめ細かく対応する。
高知県は24年度、ベトナムなどから来日し、県内で約3年間働いた場合に1人あたり30万円を支給する「定着奨励金」の制度を始めた。
(日本経済新聞 8月5日)

地方から都心部への人材流出は日本人も同様だが、外国人技能実習生についても「転籍が解禁されたら地方から都心部へどんどん人材が流出してしまう」という懸念が出ていた。育成就労制度では当初の就労先に1~2年勤務すれば転籍できるが、地方から都心部への転籍は十分に想定できる。
育成した人材が都市部の企業にどんどん流出してしまえば、地域間格差が開く一方で、地方の企業は流出分を新たに海外から調達しなければならない事態に至れば、地方の企業にとっては悪循環である。
育成就労制度では転籍先が転籍元に移籍金を払う規則が設けられるが、入国前8カ月の講習期間や就労1年間のコストを計算すれば、それでも海外から雇用するよりは低コスト済む見通しだ。ここにも格差が潜んでいる。
ただ、外国人労働者の受け入れに関わる専門家によると「就労先の選択で外国人労働者は何よりも手取り額が多いかどうかを優先する」という。賃金水準を改善すれば地方の企業でも定着を促進できる可能性があるが、これは日本人も同様である。
たとえば熊本県菊池郡菊陽町に開設された台湾の大手半導体メーカー・TSMCが高給を提示して社員を募集したところ、大量採用がかなったことが報じられた。採用と定着を強化する決め手は、やはり賃金水準である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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