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賃上げも鈍い氷河期世代 昇進遅れ不遇続く

バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代にかけて就職難で苦しんだ氷河期世代の不遇が続いている。現在40~50代前半にあたり、他の世代に比べると同じ正社員でも賃金の伸びが鈍い。管理職の割合も下がっている。このままだと将来、経済力の乏しい高齢層が膨らみ、社会保障の負担が想定以上に重くなりかねない。
世界的なインフレが波及し、日本の物価上昇率はこの2年あまり2%を上回って推移している。物価高が促すかたちで賃金も上がり始めた。厚生労働省の毎月勤労統計で、手当てなどを含む現金給与総額(名目賃金)は2022年1月以降、前年同月比でプラスが続く。
皆が賃上げの恩恵を受けているわけではない。偏りは世代間で目に就く。厚労省の賃金構造基本統計調査によると、23年の20~30代の正社員の給与は10年前の同世代より1万円あまり高い。40代後半は1千円強しか増えていない。50代前半はむしろ減った。
出版社で働く東京都内の40代の男性は「非正規社員だった30代のころは生活費の工面で手一杯だった」と振り返る。
(日本経済新聞 7月28日)
 

氷河期世代(1970~82年生まれ)は子供の教育費や住宅ローンなどで経済的負担の重い年代にさしかかっている。最も賃上げ幅を大きくしてほしい世代だろうが、賃上げが鈍くて昇進も遅れているとなれば、よくよく巡り合わせの悪い世代だ。
この世代には非正規労働者も多く、老後には今以上に生活設計の不安が重くのしかかってくる。しかも生活保護受給者の増加も想定できる。
2042年には団塊の世代ジュニア(71年~74年生まれ)」が全員75歳以上になる。団塊世代の全員が90歳以上になる40年が高齢化のピークで、以降、高齢者人口が減って社会保障費の膨張が徐々に解消されるというのが通説だが、その通りに推移するだろうか。
氷河期世代の人口は約1700万人で、団塊世代のおよそ2.5倍に達する。40年以降は高齢者の年齢層が若返るだけで、社会保障費の膨張は解消されず、高齢化問題はなかば永続的につづきかねない。どんな施策が打たれるのだろうか。おそらく定年延長によって現役年齢を引き上げ、年金生活者の支え手を増やす以外にないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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