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ITシニア人材、「25年の崖」で主戦力 富士通など厚待遇

 IT(情報技術)大手がシニア人材の待遇改善を急いでいる。富士通や伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は定年再雇用者の給与を現役世代と同水準に上げ、NTTデータグループは役職定年の見直しを検討する。老朽化した基幹システムの不具合が増える「2025年の崖」到来まで半年。ブラックボックス化した古いシステムは若手では対応が難しいケースもあり、知見のあるシニア人材は貴重な戦力になる。
富士通は4月、「モダナイマイスター」と呼ぶ認定資格を新設した。必要なスキルを備えた取得者には独自の給与体系を適用し、60歳の定年後も一般社員並みの水準を維持する。再雇用の上限年齢(65歳)を超えて働き続けることもできる。従来の再雇用制度では定年後に役職が付かず、給与水準は現役時代の半分近くに減っていた。
マイスターの取得者の一人7月から嘱託社員となった中村記章エグゼクティブディレクターは「再雇用で働くか迷っていたが、認定制度ができたことで仕事を続ける意欲が高まった」と話す。中村氏は1980年代後半から約20年間にわたり官公庁向けシステムの開発を手掛けてきた。
(日本経済新聞 7月24日)

 65歳までの就労がいわば当たり前になったので、今後は65歳以上の就労環境の整備が問われてくる。政府の有識者検討会が提出した資料によると、65 歳以上の就業者数及び就業率は上昇傾向にあり、60 代後半の男性の6 割以上、女性の4割以上が就業し、65 歳以上の就業者数は 20 年連続で前年を上回って過去最高という。
 もはや在職老齢年金制度の見直しは不可欠だ。60歳以上で年金を受け取りながら会社員として働く人の収入が、賃金と厚生年金の合計で月50万円を超えると、年金が一部減額される制度のままでは、年金の減額を避けるために賃金を抑え、その範囲でしか働かないというスタンスが浸透してもやむを得ない。豊富な経験を求めても応えてもらえまい。
 検討会の報告書素案も「高齢期の就労意欲への影響が指摘されている」と述べたうえで、
「高齢期も働き続ける者の増加が見込まれ、働き方の多様化に応じた年金制度の見直しが必要だ」と提言している。
日本老年学会・日本老年医学会は、65~74 歳では心身の健康が保たれていて活発な社会活動が可能な人が大多数を占めていると報告している。現役年齢は少なくとも70歳に延長され、やがて75歳に引き上げられる機運だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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