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三菱UFJ銀の採用、自行退職者の専用枠新設

三菱UFJ銀行は2025年4月に自行の退職者を対象とした人事採用枠を設ける。書類選考を原則なくし、年齢制限も付けない。再入行時の職種も選べるようにする。人材の獲得競争が激しくなるなか、過去に働いていた人を即戦力として重視する制度の導入に踏み込む。
銀行業界は従来、新卒で入行して定年まで勤め上げることを前提に行員を年功序列で昇格させ、経営幹部に育成する人事体系を構築してきた。ただ、人手不足が厳しくなる中、この数年で大手行は「アルムナイ(卒業生)」と呼ぶ退職者の採用に前向きになりつつある。
 新制度では年間数十人の採用を見込む。三菱UFJ銀の中途採用の社員数は23年度に347人だった。23年度の採用数でみると、1割に近い規模を新制度での採用が占める可能性がある。これまでは累計で数人の採用にとどまっていた。
 これまでも退職者に限った採用制度はあったが、銀行側が募集しているポストのみが対象だった。通常の中途採用と同様に面接のほか、書類の選考もあった。募集業務を限定しない採用は、勤続5年以上の行員が配偶者の海外転勤を理由に退職して3年以内に希望する場合に限られていた。
(日本経済新聞 7月23日)

 アルムナイ採用のメリットはミスマッチ回避にある。スキルを把握できているうえに、組織風土に適応できる体質を身に着けている。中途採用ではすぐれたスキルの持ち主でも組織風土に適応できずに離職する例が散見されるが、そのリスクを回避できる。
 さらにいえば、他流試合を経験して得た知見を導入できるのもアルムナイ採用のメリットに挙げられるだろう。
三菱UFJ銀行は、現役世代を対象としたアルムナイ同士、あるいはアルムナイと現役行員の交流の場として「アルムナイ・ネットワーク」を運営している。専用サイトも開設して、アルムナイメンバーの現職を一覧できて企業訪問や事業の相談が行える。登録しているアルムナイに質問して現在の状況を知ることもできる。
 各社で、アルムナイ採用で入社した社員のその後を追いかけると、どんな現況にあるのだろうか。プロパーよりも昇進昇格のスピードが速い例があれば柔軟でよいが、プロパーの同期よりも昇進昇格は抑えるという不文律があるようでは、せっかく元職に復帰しても十分に力を発揮できないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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