Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

介護と両立、休み方柔軟に 300万人離職防ぐ

企業が介護をしながら働く「ビジネスケアラーの支援を手厚くしている。大成建設は休暇日数を増やし、エディオンは短時間勤務をしやすくする。仕事と介護を両立できる仕組みを整えて離職防止につなげる。
ビジネスケアラーは2025年に300万人を超える見通しで、対策は急務になっている。
大成建設は介護に伴って取れる休暇の日数を最大年15日と、これまでの1.5倍に引き上げた。有給休暇扱いで、時間単位での取得も可能とした。同時に2人を介護する「ダブル介護」の場合は最大20日にした。
 育児・介護休業法は対象となる家族1人当たり年5日(2人以上の場合は年10日)まで、働き手に介護休暇の取得を認める。企業がこれを上回る休暇を与えることは可能だが、厚生労働省の調査では介護休暇制度のある企業の9割は、家族1人当たり年5日の取得しか認めていない。法廷の基準の2~3倍の大成の制度は手厚い。通院の付き添いなど短髪で短時間の休暇を取得する従業員が増え、上限に達した人もいたという。
 介護の状況に合わせて、柔軟な働き方ができるようにする企業も増えている。エディオンは4月から、8時間勤務を5~7時間に短縮できる介護向けの短時間勤務制度を見直した。これまでは3年が上限だったが、介護の必要がある間は利用できるようにした。
(日本経済新聞 5月27日)

ビジネスケアラーとは仕事をしながら家族などの介護に従事する者を指し、仕事と介護の両立が困難になると介護離職に移行するが、経済産業省によると、その数は毎年約10万人。労働力人口の減少を助長する要因である。
2030年には家族介護者のうち約4割(約318万人)がビジネスケアラーになり、約9.1兆円の経済損失が約9.1兆円となる見込みという。経済損失の内訳は、仕事と介護の両立困難による労働生産性損失が占める割合が極めて大きく、経産省の調査では、家族介護の発生前後で約3割のパフォーマンス低下が発生する。
この窮状を踏まえて経産省が立ち上げた「企業経営と介護両立支援に関する検討会」は、24年3月に「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表した。企業が取り組むべき介護両立支援のアクションとして、経営層のコミットメントなどを明記した。
その一方で経産省が重点を置いているのは、従来からのテーマである介護保険外サービスの育成だ。介護保険事業者の間では、介護保険外サービスは経済的負担を理由に普及が難しいというのが通説だが、日本政策金融公庫総合研究所の調査では、「利用してみたい」(39.7%)が「利用したいとは思わない」(39.1%)を上回った。
この調査は2016年の発表だが、当時は今ほど介護保険外サービスが認知されていなかったので、今はもっと利用ニーズが高まっているのではないのか。
経産省は、第10期介護保険事業計画(27~’29年度) に向けた制度改正議論が始まる25年度から、介護保険外サービスに関する福祉職や職域の専門窓口設置や、業界団体による認証制度設立支援などに取り組む計画だ。だがニーズ顕在化の道筋は見えていない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。