2024/05/16
トヨタ自動車が、65歳以上のシニア従業員の再雇用を拡大する新制度を8月に始めることがわかった。電動化への対応や自動運転技術の開発などで現場の負担が高まる中、シニアの持つ高い専門知識やノウハウを組織運営に生かす狙いだ。人手不足が続く中、シニアの就労機会を広げる動きが広がってきた。
トヨタの定年は60歳で、65歳までの再雇用制度がある。現在、65歳以上の再雇用制度はなく、例外的に約20人を雇用するが、8月からは再雇用の対象を全職種に拡大。高度な知識や技能を持ち、職場からも継続的に働いてほしいと期待されている従業員を対象に、70歳まで雇用できるようにする。給与などの処遇は、現行の再雇用制度に準じて個別に決めるという。
トヨタは、ガソリン車から電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)まで幅広く開発する「マルチパスウェイ(全方位)」戦略を掲げ、開発や生産現場への負担が大きくなっている。
グループ会社では認証不正や品質問題も相次いでおり、事業の基礎となる人材を育てて技能を伝える上でも、シニアの活躍の場を増やす必要があると判断した。
60歳から65歳までの再雇用者の処遇改善も図る。現行制度では、部長職を続ける場合など一部を除いて賃金が現役時代の半分になるため、60歳時点で再雇用を選ばずに退職してしまう人が2割ほどいるという。
(読売新聞オンライン 5月8日)
WHO(世界保健機構)によると、日本人の健康寿命は2023年に世界トップの74歳だった。定年延長の動向をみると、健康寿命が尽きるまで働く人が増えそうだ。
内閣府が2023年11月に実施した「生活設計と年金に関する世論調査」によると、何歳まで働きたいかについて、最も多かったのは「61~65歳」(28・5%)。以下、「66~70歳」(21・5%)、「71~75歳」(11・4%)とつづいた。回答した年齢まで働きたい理由で最も多かったのは「生活の糧を得るため」(複数回答)で、じつに75・2%を占めた。
トヨタ自動車のシニア従業員には当てはまらないかもしれないが、生きがいとか社会参加よりも、生活設計という切実な問題が還暦を過ぎてもなお、多くの就労者に重くのしかかっている。毎日出かけるところがあるとか、毎日やることがあるという社会参加が高齢期の生きがいを支えると説かれているが、現実はそうせざるを得ないのだ。
この実態は日本経済新聞社が実施した調査でも同様に浮き彫りになった。23年10〜11月に実施した調査で、何歳まで働くつもりか尋ねたところ、「70〜74歳」が21%、「75歳以上」が18%と70歳以上が39%を占めた。将来不安に感じることは「生活資金など経済面」が7割を占めたので、やはり生活費を確保する目的で70歳以上まで働きたいのだ。
かりに生活費に不安を覚えなければ、どんなライフスタイルを志向する層が多くなるのだろうか。
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