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ビッグモーター再建の新会社始動 新社長、コンプラ徹底改善

伊藤忠商事は5月1日、中古車販売大手ビッグモーターから事業を移管した新会社を設立したと発表した。新会社名は「WECARS(ウィーカーズ)」。2023年、保険金の水増し請求などの不祥事が相次いで発覚したビッグモーターの事業再建を担う。
5月1日の会見で、伊藤忠商事・住生活カンパニー 真木正寿プレジデントが 「再建には組織風土改革が最重要。ウィーカーズが成長していくためには、 新株主、新経営陣のもとでコンプライアンスを最重要視する組織へと変えていく必要がある」(真木氏) と語り、コンプライアンス意識を含めた企業風土の徹底的な改善の決意をにじませた。
(中略)
ビッグモーター(以下旧会社)から事業分割した中古車買い取り事業・販売事業の約4000人の従業員や店舗を引き継ぎ、信用回復とブランド再生を進めていく。
ウィーカーズの社長には、元伊藤忠商事執行役員の田中慎二郎氏が就任する。取締役には、創業家やこれまでの経営陣を含まない7人を選出した。
過去に問題を起こした役員・社員についても、問題発覚後に設置した内部通報制度などの仕組みを運用することで、懲戒解雇をはじめ厳正に対処している。今後明らかになった分については、新経営体制のもとで引き続き対応していく方針だ。
(BUSINESSINSIDER 5月1日)

先ごろ、ビッグモーターが、顧客情報の漏洩、従業員への暴力、セクハラなどを犯した社員に対して、計14件で懲戒解雇や降格などの処分をしたことが報道された。過去に公けにされた数々の不正行為やハラスメントを含めて、これらは一部の社員の愚行に過ぎないのか、それとも氷山の一角なのか。
伊藤忠は約50人を新会社に送り込んで組織風土の改革に取り組むというが、自民党の裏金問題と同じように、実態解明を省いた再発防止策には健全な機能を期待できない。新会社では、服務規程、業務フロー、人事評価制度、給与体系、教育研修など社員の行動規範に関わる諸々の仕組みにメスを入れるのだろうが、その前に社内を精査して、不正やハラスメントの芽を根絶しておかないと愚行は再燃する。
日本の産業界ではM&Aの条件に、雇用の保障が当然のように組み込まれているが、ビッグモーターの場合、この通例は当てはまらないだろう。とりあえず雇用は継続されるが、
これから実施される綱紀粛正に対して「旨味がなくなった」と受け止めて退職する社員も少なからず現れるのではないのか。伊藤忠もみずから鉈をふるうことはしなくとも、不良分子の依願退職を促すような就労環境を整備してゆくはずだ。
 新会社では破格の高給を手にできそうにないとか、コンプライアンス遵守という改心をするつもりがないという社員は、どんどん退職してゆくに違いない。そうでないと組織風土の改革は進まない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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