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社長の平均年齢は60.5歳 33年連続の上昇、高齢化止まらず

「団塊の世代」の多くが後期高齢者に達し、事業承継の課題が一層深刻になるといわれている「2025年問題」まで、残すところ1年を切った。  
帝国データバンクが実施した調査では、2023年における全国の後継者不在率は改善傾向が続き過去最低の53.9%となった。円滑な事業承継には中長期的な準備期間が必要であるが、足元では社長の高齢化には歯止めがかからない状態が続いており、バトンタッチが間に合わず事業継続に影響を及ぼすケースが増加する可能性がある。
全国の社長平均年齢は、統計として遡れる1990年から毎年上昇し続けている。今回の調査でも同様の傾向となり、2023年は前年比0.1歳上昇の60.5歳となった。加えて、2023年における前年からの社長交代率は3.80%となった。14年連続で3%台が続いており、前回調査(3.82%)からほぼ横ばいだった。総じて、社長の世代交代に関して以前より活発な様子は見られず、社長の高齢化はさらに進行しているといえよう。  
社長が交代する際の年齢は平均で68.7歳となり、前回調査(68.8歳)からほとんど変わらなかった。高齢ながら社長として経営を続けることにはリスクがともなうなかで、70歳近くで後継者にバトンタッチをしている結果となった。
(帝国データバンク 4月12日)

社長が高齢化すると経験をベースにリスク回避には長けてくるが、会社の成長力は鈍化する。社長としての伸びしろがゼロに近づくのだから当然の流れだ。
東京商工リサーチの「2021年「全国社長の年齢」調査」では、70代以上では「増収率の低下」が見られると同時に、「2期連続赤字」の割合が増える傾向となった。また、経営者の年代が上がるにつれ、「売上高を伸ばしていく必要がある」ものの「自社の成長は市場の成長に依存している」と考えており、「リスク許容度」と「投資意欲」が低くなる。
当然、事業承継が行われた中小企業の「売上」および「当期純利益」の成長率は、承継が行われなかった企業と比較して高くなる傾向にある。社長の平均年齢が60歳を過ぎた現状を踏まえれば、速やかな世代交代が求められるが、その時期は70歳をゆうに過ぎてからのようだ。
 今年2月、百五総合研究所(三重県津市)が中部管内5県(愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県)の中小企業を調査した「中部地域における事業承継・引継ぎに関する課題及び取組調査」を発表した。
この5県で事業承継を検討している企業は8割以上だが、半数以上の企業が事業承継の取組が開始できておらず、多くの企業で後継者の検討・確保といった具体的な事業承継手続きに進めていない状況がうかがえるという。
なぜ事業承継が進んでいないのか。事業承継したい年齢は、5県全体で「70~74歳(32.4%)」 が最も高く、ついで「75~79歳(29.5%)」だった。健康寿命を終えるまで年齢まで社長を続ける意向なのである。
産業界全体の活力低下は否めない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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