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初任給、頭取が「4万5千円引き上げます」 入行式で突然の発表も

福岡県内各地で1日、入社式などがあった。大手企業を中心に賃上げの流れが相次ぐなか、さっそくの初任給引き上げの朗報に顔をほころばせる新社会人もいた。
「私から、サプライズを用意しました」  
福岡市内であった福岡銀行の入行式。230人の新入行員に向かって、五島久頭取があいさつでこう切り出した。「皆さんの初任給は(全国転勤を伴う大卒の総合職で)21万5千円ですが、7月から4万5千円引き上げて26万円とします」。同行は既に初任給引き上げを発表していたが、「来春の新入行員から」としていた。思わぬ前倒しで、230人も賃上げの恩恵を受けることになる。  
五島頭取は「社会人として収入を得ることの重みを感じながら、日々努力を続けてください」と語りかけた。  
発表時、微動だにせず聴き入っていた新入行員ばかりだったが、久保雅也さん(23)は「率直にうれしい」。賃金が増える分は趣味の読書やバイクに使いたいという。「頑張って仕事をしなければならないという身が引き締まる思いです」
(朝日新聞デジタル 4月1日)

7月からの賃上げは、試用期間を終えたら正規の給与を支払うという趣旨だろう。うがった見方をすれば、4~6月にあえて低い給与を設定し、入行式にサプライズ発表をして、賃上げのインパクトを訴求したのではないだろうか。
舞台裏の憶測はともかく、新卒社員の3割が3年以内に離職する時代に初任給を大盤振る舞いするメリットはあるのかという疑問も湧くが、初任給を大幅に引き上げるニュースがこうもつづくと、3年以内の離職を想定して初任給を抑制すれば予定通りに採用できない。そう判断せざるを得ないのだろう。
しかも多くの社員の高齢化が進むなかで、世代交代に向けて若年層を厚くしなければならない。地方銀行については、金融庁が2023年6月に発表した「金融仲介機能の発揮に向けたプログレスレポート」で行員の高齢化を懸念している。
一部の地銀行で50歳代の行員が多、40歳代の行員が他の年代と比べて少ない傾向が顕著に見られ、10年後には50歳代の行員数が現状の約3割程度になる可能性のある地銀もあるという。10年後を見据えて、金融庁は「10年後のマネジメントを担う職員を確保するためには、人材育成や年功序列ではない人材登用、中途採用等を計画的に進める必要がある」と提言する。
 すでに一定割合の離職を織り込んで人員計画を立てることが常道になったが、一方で定着の促進にどう取り組むのか。地銀の離職理由で多いキャリア(適正・やりがい・スキルアップなど)に関する問題にどうアプローチするかが課題である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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