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「退職者カムバック」歓迎 みずほ、中途採用数が新卒超え

新卒で入行し、定年や出向まで勤め上げるのが当たり前だった銀行の働き方が変わり始めた。2023年度の3メガバンクの採用全体に占める中途採用の比率は半分に迫り、みずほフィナンシャルグループ(FG)は初めて中途採用数が新卒を上回る見通しだ。退職者は「裏切り者」という冷たい視線を浴びることもあったが、今では退職者の再入行も当たり前になり、「人材の回転ドア」が回り始めた。
(中略)
かつては「退職が決まった瞬間に他人扱いだった」(メガ銀から転職した外資系金融機関幹部)。今は様子が違う。三井住友銀行からベンチャーキャピタル(VC)に転職後、同行に再入行した40代行員は「辞めてからも変わらず付き合ってくれたことで再入行を決意した」と話す。
メガバンクの採用は既に新卒中心ではなくなっている。23年度の中途採用数は現時点で計約1100人。新卒も含めた同期間の採用数に占める割合は45%と半分に迫る。特にみずほグループ3社で5500人の中途採用者を確保しており、発足後初めて新卒の採用数を上回る見通しだ。
(日本経済新聞 3月26日)

昭和の終わりごろにさかのぼるが、信託銀行が中途採用を行なったことが“脱・純粋培養”として話題になった。目的は即戦力の確保だったが、まだ試行的にごく一部を採用したという程度で、中途作用を戦略的に行ないながら拡大してゆくという流れではなかった。
 当時は銀行に限らず大手企業の中途採用はレアケースで、あくまで新卒採用による終身雇用の時代だった。OB会も定年退職者の会で、いわば中途退職者がよそ者扱いされる排他性が否めなかった。ムラ社会だったのである。
転職もヘッドハンティングを除けばキャリアアップではなくキャリアダウンで、実際、転職すれば給料もダウンした。ひとつの会社で定年まで勤め上げたかどうかが、信用の証にすらなっていたものだ。当然、リストラは経営危機に瀕した時に限られ、事業構造の転換を理由に黒字リストラを実施することは考えられなかった。黒字リストラを実施しようとすれば社員に対する裏切り行為として、まず労働組合が認めず、世論にも厳しく糾弾されただろう。まさに隔世の感――。
再入社が珍しくなくなり、退職者との共同事業や退職者への出資が増えれば、会社は社員にとってプロジェクトチームのような位置づけになってゆく。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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