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東京都「後継者不在率」過去最低53.9%

東京都における企業の「後継者問題」は改善傾向が続いている。2023 年の東京都・全業種約 5.2 万社における後継者動向について調査した結果、後継者が「いない」、または「未定」とした企業は2.8 万社に上った。この結果、後継者不在率は53.9%(全国平均 53.9%)となり、調査を開始した2011 年以降で過去最低を更新した。初めて不在率が6 割を切った前年の水準をさらに 3.8ポイント 下回ったほか、コロナ前の 19 年からも 12.4ポイント 低下し、大幅な改善傾向が続いている。
5 年前の 2018 年時点と 23 年の後継者策定状況を比較可能な約2.8 万社を分析したところ、35.3%にあたる約 1 万社が新たに後継者を決定していた。このうち、18 年以降に事業承継を行った後も、後任経営者が後継者を既に策定した「(代表交代後)新規に策定」が 19.0%、事業承継は行っていないものの「新規に策定」した企業が16.3%に上った。
この間、各自治体や地域金融機 関をはじめ事業承継の相談窓口が開設したほか、第三者へのM&Aや事業譲渡、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継などプル・プッシュ型の支援体制が整備・告知された。
(帝国データバンク 11月27日)

 事業承継は行き詰まりを見せた親族間承継から内部昇格やM&Aなどの第三者承継へとシフトしてゆく。親族間承継を前提にしてきた時代がつづいたが、候補者が不在なら承継相手を切り替えるか、それとも廃業する以外にない。
 帝国データバンクが調査した2023年の事業承継は、「内部昇格」44.7%、買収や出向を中心にした「M&Aほか」26.0%、同族承継」15.6%だった。M&Aの普及や事業承継税制の改良・拡大、金融機関主導の事業承継ファンドなど、多種多様なニーズに対応可能なメニューが揃ってきたことが、後継者問題の解消に多大な役割を果たしたという。
 M&Aコンサルタントは「自分の会社は売れないと思い込んでいる社長が多い。価値を認識していないのだが、第三者が評価すれば買い手がつくケースは少なくない。まずは第三者に評価してもらうことだ」と指摘する。
 経営者の高齢化が進めば事業承継の関心はおのずと高まるが、親族にも社内にも承継候補者が不在なら選択肢はM&Aである。第三者評価の啓発が必要だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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