Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

「キャリア警察官」を中途採用へ 多様な人材確保のため警察庁が新たな試み 

 警察庁は総合職であるいわゆる「キャリア警察官」を、初めて中途採用することを決めた。
警察庁によると、募集するのは民間企業などで2年以上働いたことがある大学卒業以上の学歴を持つ人で、年齢制限はない。
選考については新卒採用の国家公務員試験とは異なり、警察庁独自の採用試験で、一次で職歴などの書類審査、二次で面接や論文考査が実施される。
採用後の警察での階級は、通常新卒のキャリア警察官の場合、「警部補」から働き始めるが、2年以上の職務経験者は「警部」、7年以上の職務経験者は「警視」としてスタートすることになる。
10月に受け付けを開始し、2023年2月に合格発表が行われ、4月からの採用となる。
治安情勢の複雑化などを受けて、社会人経験のある多様な人材を確保することが狙いで、担当者は「困難な課題に立ち向かう志と情熱をもって警察の幹部として働きたい人に、是非応募してもらいたい」と話している。
(FNNプライムオンライン 10月5日)

 民間企業出身者が警察庁に中途入省した場合、業務スキルが秀逸でも、まずもって問われるのは組織文化になじめるかどうかだろう。体育会気質の階級組織に勤務してきた人なら適応できるだろうが、自由闊達な社風の会社に勤務した人にとっては、型にはめ込まれて窮屈この上ないと実感するのではないだろうか。
 治安維持組織が上意下達で一致乱れぬ統制をとるのは当然で、役職に関係なく異論反論も自由闊達に発言できる組織では十全に機能しないうえに、価値観も多様であっては統制がとれない。
「警察職員の職務倫理及び服務に関する規則」には「誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること」「人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行すること」「規律を厳正に保持し、相互の連帯を強めること」「人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努めること」「清廉にして、堅実な生活態度を保持すること」と既定されている。
 さらに「警察庁職員の服務に関する訓令」の「廉潔の保持等」には「次の行為をしてはならない」として①職務に支障を及ぼすおそれがあると認められる贈与、もてなし、その他の利益の 提供を受けること② 職務に支障を及ぼすおそれがあると認められる者と職務の公正が疑われるような 方法で交際をすること③不相応な借財その他の職務に支障を及ぼすおそれがあると認められる行為をすること――と書かれている。
 これらの規則を理解するのは簡単だが、身についた感覚の修正は簡単ではない。中途採用の選考では警察文化への適応性も審査するのだろうが、どんな方法を用いるのだろうか。
焦点はカルチャーフィットである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。