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そごう・西武“最終手段”ストライキ発動 要因は“物言わぬ”セブン

そごう・西武の労働組合は8月31日、西武池袋本店でストライキを予定している。大手百貨店でのストライキは、1962年5月に当時の阪神百貨店で実施された以来、61年ぶりだ。なぜ、ストライキという“最終手段”に発展したのか。
事の発端は2022年11月、親会社のセブン&アイ・ホールディングスが、そごう・西武を米投資ファンドに売却すると発表したことだ。小売・流通アナリストは「売却後の雇用について明言されず、ここまでもつれた」と指摘する。
売却先の投資ファンドは、そごう・西武が持つ池袋、渋谷、千葉の不動産を、提携先であるヨドバシカメラに売却する計画だという。「例えば三越伊勢丹に売却するのであれば、労働組合側も意見しないでしょう。ですが、ヨドバシに売却するとなると話は変わってきます」(小売・流通アナリストの中井彰人氏)  
ヨドバシに売却された場合、百貨店としての売場は大幅に縮小、さらには切り売りされて消滅する可能性もある。そうなれば、そごう・西武の従業員の雇用に大きな影響が出ることは避けられない。  
しかしセブン&アイHDは、今後の雇用について説明を求める労働組合に対し、明言を避けている。
(ITmediaビジネスオンライン 8月31日)

 西武百貨店従業員の雇用問題については、セブン&アイ・ホールディングスの言い分を確認しておきたい。組合側の言い分と一致することはないのだが。
 ストライキ当日の8月31日、同社は「当社子会社である株式会社そごう・西武の 西武池袋本店におけるストライキ実施を受けて」と題して、声明を発表した。
「そごう・西武は、今後とも、そごう・西武労働組合との間で、雇用維持及び事業継続 に関する団体交渉及び協議を継続するとともに、当社は、そごう・西武とそごう・西武 労働組合との間の協議について適切な範囲で支援・協力してまいります」
「適切な範囲で支援・協力」とは、雇用の完全維持ではない。できる限り雇用すると表明しているようなもので、従業員にとっては疑心暗鬼にならざるを得ない。まして売却先は外資系ファンドである。
 これまでの交渉過程については、8月28日に以下の声明を出している。
「仮に、西武池袋本店のリニューアルのために、そごう・西武の正社員に余剰人員が生じた場合、そのような余剰人員も、上記のとおり一義的にはそごう・西武による新規事業や他店への配置転換等により対応される予定」
「当社グループにおける人員の受け入れを含めフォートレス及びそごう・西武に適切な範囲で協力し、また、そごう・西武による団体交渉や協議に関与者として適切な範囲で関与を継続する予定」
 売却後は雇用主でなくなるので、雇用維持の約束は難しいという事情もあるのだろうが、それ以前に、雇用維持を売却の条件に明しなかったのではないのか。というよりも、赤字企業を買収してもらうという立場にあって、そこまで要求できなかったのだろう。
 いずれにしても従業員をストライキにまで追い込んでしまった。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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