2023/08/11
中小企業庁は2022年に改訂したガイドラインで、円滑な事業承継について「喫緊の課題」と位置づけた。同庁の試算によると、25年までに平均的引退年齢とされる70歳を超える中小事業者は約245万人となり、このうち半数強の127万人は後継者が未定だ。
国は全都道府県に設置した「事業承継・引継ぎ支援センター」を通じて後押しする。近年は事業承継のノウハウが豊富な地域の金融機関の出身者らをコーディネーターとして配置し、新規案件の発掘を強化。同センターを介し、22年度に第三者への事業承継が実現したのは前年度比11%増の1681件で過去最高となった。
民間ではインターネット上で売り手と買い手を仲介する業者も増えている。事業承継の可能性を広げようと、中小企業庁は大手仲介3社と連携。同センターに相談を寄せた企業が希望した場合などは会社名を明かさずに情報を共有し、事業の譲り受けを希望する買い手を募れるようにしている。
(日本経済新聞 8月3日)
第三者への事業承継とおもにM&Aである。この記事に「会社名を明かさずに情報を共有」と書かれているが、M&Aの実行プロセスで大きなリスクは情報漏洩だ。
とくに「譲渡したい」という情報が流れてしまうと「あの会社は経営が危ない」という噂に拡大して、社員の退職や取引先の離脱につながりかねない。
M&Aアドバイザリー会社は情報管理を徹底させるために、譲受企業に対して秘密保持契約書を締結したうえで情報を開示している。株式譲渡が完了するまでは徹底的に秘密裡に進め、完了後に従業員と取引先にM&Aを実施したことを情報開示する。
ただ、ある程度の規模の会社で、たとえば専務から新入社員まで同時に情報開示したら、専務が「なぜ自分に相談しないで進めてしまったのか?」と経営者に対して不信感を抱いてしまうケースもある。しかも経理責任者とはM&A交渉の進捗状況を共有しておかないと、買収監査に対応できない。
そこで基本合意契約を締結したら常務以上や経理責任者には守秘義務を命じて、開示をしてもらうケースもあるという。
M&Aアドバイザリー会社のなかには、会社の資料を入手していることが社内に知れたら具合が悪いので、休日に会社を訪問して社長とともに資料をピックアップすることもある。この作業を税理士に依頼して仲介会社の存在を匂わせないように対応することもある。
これほどM&Aは秘密裏に進めないと、どこかで情報が洩れて破断しかねないのである。
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