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後継者探し、地銀と連携 政投銀「サーチファンド」

日本政策投資銀行は経営者人材と事業承継を希望する企業をつなぐ「サーチファンド」で地方銀行と連携すると発表した。10行程度が協業や出資を検討しており、ファンドの規模は40億円程度になる見通し。地方企業の活性化に向けて後継者探しを後押しする。
政投銀、日本M&Aセンターホールディングスと経営者紹介のキャリアインキュベーション(東京・千代田)などが共同出資する運営会社が新たにファンドを立ち上げた。従来のファンドは外部の出資を募っていなかった。運営期間は10年で、1件の投資を決めた。
 サーチファンドは経営者になりたい「サーチャー」が経営したい企業を選び、ファンドからの投資を通じて経営権を取得する仕組み。米国で1980年代から始まったとされ、経営者は少ない自己資金で企業の経営に携われる利点がある。
 ファンドの運営会社のサーチファンド・ジャパン(東京・千代田)によると新型コロナ
ウイルス禍を機に経営からの引退を決める経営者が増えている。(日本経済新聞 5月2日)

 投資事業を行うGrowthix Investment(東京都中央区、)が刊行した「サーチファンド白書 2022年度」によると、サーチファンドを活用した事業承継案件は2022年度に5件が成立した。
 自治体もサーチファンドの活用に乗り出した。福井県は①福井県事業承継ネットワーク参加機関や福井県事業承継・引継ぎ支援センターを通じて募集した後継社長を募る福井県の企業に関する情報提供②サーチ活動に係る福井県への訪問旅費を支給③サーチファンドを活用して福井県の企業を事業承継し、新たに従業員または役員1名以上の雇用・任用を行う場合、最大で300万円の奨励金を支給する。
 サーチファンドを活用した事業承継が上手くいくかどうか。経営主体はファンドだが、ひとえに送り込むサーチャー(経営者)の力量次第である。成果を急ぐあまり先走ると社員との間に溝ができてしまい、すべてが空回りしてしまう。退職者が続出すればサーチャー失格である。
最優先すべき事項は社員との信頼関係づくりだが、当然、一定の期間を要する。その期間は成果をさほど期待できないが、ファンド側がどこまで容認するのか。サーチャーの成功モデルが創出されればよいが、しばらく先になりそうだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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