2023/05/11
人手不足の分野で外国人労働者を受け入れる在留資格「特定技能」について政府は24日、在留期間の更新に制限がなく、家族も帯同できる「2号」を現行の2分野から11分野に拡大する方針を自民党に示した。与党内の了承を経て、6月の閣議決定を目指す。
経済界などの要望を受けた措置で、幅広い分野で外国人の永住に道を開く転換点となるが、自民党の保守派などからは「事実上の移民の受け入れにつながる」といった反発が予想される。
特定技能は、深刻な人手不足に対応するために、一定の専門性を持つ即戦力の外国人を受け入れる制度。2019年4月に導入され、1号と2号がある。
1号には飲食料品製造、産業機械など製造、農業、介護などの12分野があり、「相当程度の知識または経験」が求められる。在留期間の上限は5年で、家族は帯同できない。
1号からのステップアップを想定した2号は「熟練した技能」まで必要で、現場統括ができる知識などが要る。在留期間の更新に制限はなく、家族帯同も可能だが、人手不足が特に深刻な建設と造船・舶用工業の2分野に限られていた。(朝日新聞デジタル 4月24日)
国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口(令和5年推計)」を公表によると、50年後の日本の人口は約8700万人に減少する。子育て支援もさることながら、出産支援や結婚支援にまで踏み込まないと出生数の増加は期待できない。
労働力を維持するには外国人の雇用に頼らざるをないのは不可避の手段だ。国際的にも批判の的になっている技能実習制度を新制度に移行させ、さらに特定技能の対象職種を拡大すれば在留年数が長期化する。なし崩し的に永住に向かう動きは十分に想定される。
事実上の移民が大量に発生する。移民政策の価値判断はともかく、欧米の移民受け入れ国では厄介な摩擦が頻発していることは紛れもない事実である。この事実を前にすれば、日本政府が技能実習生の受け入れ拡大や特定技能の創設のキーワードに示した「多文化共生社会」という社会像も、机上のデザインにとどまってしまう。
移民政策への流れを危惧する意見が示されるのは必然である。だが、松野博一官房長官は25日の記者会見で、「いわゆる移民政策をとる考えはない」「厳格な審査を経て更新を認めるものであり、無期限の在留を認めるものではない」と述べた。
多文化共生社会という概念は耳障りこそよいが、歴史を踏まえて国柄はどうあるべきかという視点が弱い。
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