景気回復に伴う求人増で、大学生の就職戦線は売り手市場が鮮明になっている。今春卒業した大学生の就職率は96.7%で、過去最高だったリーマン・ショック前の2008年春(96.9%)に次ぐ高水準となった。来春に向けて引き続き企業の採用意欲は旺盛で、就職活動中の学生の間では「大手志向」が強まっている。
文部科学省と厚生労働省は19日、全国の国公私立大62校を抽出し、今春卒業した大学生の就職状況を調べた結果を発表した。
就職希望者のうち実際に仕事に就いた人の割合を示す就職率は、4月1日時点で96.7%。前年同期を2.3ポイント上回り、過去最低だった11年(91.0%)から4年連続で上昇した。
就職希望者が大卒全体に占める割合(就職希望率)は72.7%と前年を1.2ポイント上回り、1996年の調査開始以来、最高を記録。卒業時に就職できなかった学生は推計1万3600人で、前年から8600人減った。
(日本経済新聞 5月19日)
大卒就職率の上昇は、企業が業績の先行きに強気になっていることを示している。リーマン・ショック直前の世界経済は、米国の不動産価格の急騰など、やや異常と言える程の活況を呈していた。今春の就職率がその頃に匹敵するところまで回復したことは、日本企業が今後の成長・拡大にかなり自信を深めている証左だ。
一方、厚生労働省が19日に発表した2014年度の毎月勤労統計調査によると、現金給与総額の平均は、前年度比0.5%増で4年ぶりに増加したものの、消費税増などの物価の伸びには追い付かず、物価増を差し引いた実質賃金は4年連続の減少となった。2014年度については企業の自信が賃金に反映されるのが遅れたとも言える。
しかし、今年度は、春闘で過去最高のベースアップが相次ぎ、賃金の上昇が加速していることに加えて、消費税増税の延期、原油価格の低迷などによる物価の安定が予想される。5年ぶりに実質賃金が上昇に転じる可能性が高い。就職率と実質賃金の上昇が、国内の消費拡大を牽引し、さらなる景気の拡大につながることが期待される。
ただし、大卒就職率96.7%という高い数字は、買い手である企業から見ると、思い通りの人材を確保しにくい水準でもある。成長の機会があっても人材が確保できなければ成長を実現することはできない。企業側も、働き方の多様化を進め、非就職希望者や外国人でも働きやすい環境を整えるなど、努力を積み重ねる必要がある。
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