2015/05/14
ワタミは12日、2015年3月期の連結最終損益が126億円の赤字(前の期は49億円の赤字)になったと発表した。2月に公表した従来予想(70億円の赤字)から、さらに赤字幅が拡大した。主力の居酒屋チェーンで苦戦が続いており、不振店舗の減損処理などで特別損失が膨らんだ。
赤字が拡大した最大の要因は居酒屋を手がける外食事業の低迷だ。主力の「和民」や「坐・和民」では客足が減り、外食の既存店売上高は前の期から約7%減少した。不採算店舗の減損損失を約46億円計上した。
ワタミは国内外食事業や食事宅配(宅食)事業などを手がける傘下3社を合併し、3月に新会社の「ワタミフードシステムズ」を設立した。外食の不振で同社の業績が低迷。宅食で過去に買収した案件に関連してのれん代も償却した。
ワタミは約100店を閉鎖した前期に続き、16年3月期も「和民」など85店程度を閉める方針を明らかにした。前期の特別損失には、この85店分の閉鎖に関連した約18億円の損失を含む。
(日本経済新聞5月13日)
主力の居酒屋事業の不振に喘ぐワタミの業績が悪化している。労務問題でブラック企業と揶揄されたことでブランド力に陰りが見えてきた影響もあるが、既存店売上高が7%減少している理由はそれだけではない。そもそも、居酒屋という業態が構造不況に陥っている。
若者のアルコール離れやフェース・ツー・フェースでのコミュニケーションよりネットでのコミュニティを重視する傾向はますます強くなり、コミュニケーションの場としての居酒屋の立ち位置を脅かしている。
居酒屋を復活させるには、そこに集う客に、どのような体験を与える空間を提供できるかにかかっている。メニューの価格を上げ下げするだけでは不十分だ。まして、業績が悪いからアルバイトに低賃金、重労働を強いてコストダウンを図るというのでは長期的な事業の発展は望めない。
ワタミは今回の業績悪化の責任を取って、6月~2016年3月の10カ月間、役員と執行役員の報酬を最大50%減額する。前社長の桑原豊氏の取締役退任も発表した。経営陣が責任を取るのは当然だろう。ただ、経営責任を認めただけでは、業績は回復しない。試されているのは経営陣の発想力だ。
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