政府の規制改革会議は25日、すでに裁判で不当と認められた解雇を、金銭補償で解決する制度の導入をめざす意見書をまとめた。解雇された労働者から申し立てがある場合だけに適用する制度とする。不当解雇をめぐるルールを明確にし、労働者が泣き寝入りを迫られる事態を防ぐ。経営者側も労働紛争の決着を見通しやすくなる。
6月をメドに政府が閣議決定する規制改革実施計画にこうした方針を反映する。法整備に向けた議論が動き出すが、曲折も予想される。
解決金制度は裁判で不当解雇と認められたとき、労働者が職場に戻るかわりに、法律で定められた一定額の補償金を使用者から払い、雇用関係を解消する仕組み。
規制改革会議は意見書で「金銭解決の選択肢を労働者に明示的に付与し、選択肢の多様化を検討すべきだ」と提起した。ただ、不当解雇と認められたなら職場に復帰したい、という労働者もいる。あくまで「労働者側からの申し立てのみ認めるべきだ」と強調した。(日本経済新聞 3月26日)
かりに裁判で不当解雇が認定された場合、労働者にとって職場に復帰したところで、浮いてしまって働きにくいだろうから、金銭で解決してスッキリしたほうが現実的だ。問題は企業側である。
大手企業の場合、裁判による不名誉を避けるために金銭で解決する方針に出るだろうが、中小企業では名誉よりも支払いの阻止を優先せざるをないのではないか。労働者には解決金を得るため提訴に踏み切る傾向が強まるかもしれない。
しかし、裁判で金銭補償による解決が命じられたところで、はたして、どれだけの企業が素直に解決金を支払うだろうか。懐具合を理由に減額や分割、あるいは遅々として支払おうとせずに、労働者が観念するのを待つ例も増えるに違いない。
金銭補償を制度化するのなら、支払いの履行を担保する措置も不可欠である。
Talk Geniusとは-
ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。