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「労働移動」の議論加速 ジョブ型雇用普及、焦点に

2023年の春季労使交渉では、労働生産性の向上や円滑な労働移動の議論もポイントとなる。経団連の十倉雅和会長は23日、連合とのトップ会談終了後「ポジティブな意味での労働移動」の議論を連合と進めていく方針を示した。日本の春季交渉では、雇用維持の議論が優先され長く年功型の賃金体系が続いたことで、賃金の停滞につながってきた。
労働移動関連では職務内容に応じて人材を起用する「ジョブ型雇用」について、近年の春季交渉で議論が徐々に始まっている。ジョブ型が定着すれば人材の流動化につながり、生産性向上や人材の賃金引き上げを促すとみられている。人材のスキル向上といった人への投資とともに、ジョブ型は今年の春季交渉でも多くの企業で議題の一つとなりそうだ。
日本総合研究所の山田久副理事長は「米国のような大胆な解雇制度の導入は社会不安につながり難しい。企業に所属したまま出向する『在籍型出向』など日本型のソフトな労働移動に仕組みを労使で議論すべきだ」とする。(日本経済新聞 1月24日)

経団連が発表した「2023 年版 経営労働政策特別委員会報告-『人への 投資』促進を通じたイノベーション創出と生産性向上の実現」は労働移動について、「現行の『雇用維持型』のセーフティーネットは、成長産業・ 分野への円滑な労働移動を阻害していると指摘されている」と述べている。
この見解に対して、連合は反発した。「連合見解」と題する文書で当該指摘はコロナ禍における分析をもとにしたものであり、不況期においては待遇改善等を伴う良質な労働移動が難しくなるのが自明のことである」と述べ、あくまで雇用維持を重視した。
「雇用調整助成金が雇用維持に果たす役割は極めて大きく、今後も雇用のミスマッチ解消や各種能力開発の充実とともに、雇用調整助成金など雇用の安定・維持に関するセーフティーネットの整備が重要なことは何ら変わるものではない」
経団連が失業等給付について「自発的に成長分野への労働移動を希望する働き手に対しては、年齢や求職理由に関わりなく手厚く給付することが一案」と提言したことに対しては、「給付の本来の目的は、労働者が失業または雇用継続困難となった際の生活や雇用の安定をはかるためのものであり、労働移動の促進のために制度を歪めることは適切でない」と反論した。
労働移動は、移動させたい経営側、移動したくない労働側の折衷案が見出だされていない。労働者に対して失業給付だけでなく、インセンティブを付与しないと、なかなか進展しない問題だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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