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賃上げ中堅に広がり、ものづくり労組の中間集計では最高に

20150403

機械・金属関連の中小メーカーの労働組合が多く加盟するものづくり産業労働組合(JAM)は31日、2015年春季労使交渉の中間集計をまとめた。妥結している企業の平均賃上げ額は月額6132円となり、同時期の集計では過去最高だった。組合員数300人以上では前年実績を上回る妥結額が相次いでおり、賃上げの波は大手から中堅へと広がっている。
31日時点で加盟労組1590団体の25%にあたる398団体が既に妥結しており、定期昇給とベースアップ(ベア)を含む平均賃上げ額は前年同期を485円上回った。ベアを明示した企業の363団体の平均回答額は1933円だった。
ミツミ電機はベア6300円の労組の要求に対し、会社側の回答は大手電機と同額の3千円だった。前年実績から2千円の上積みとなった。三社電機製作所もベアにあたる賃金改善3千円を決めた。地方企業でも浜松ホトニクスは「好業績を従業員に還元する」とし、ベアを含む賃金改善で3千円と00年以降の最高水準で妥結。15年ぶりにベアを実施するOSGも金額は3千円だった。
加盟労組の8割以上を占める組合員数300人未満の中小の妥結は大半が4月以降となる。トヨタ自動車が取引先に値下げ要請を見送るなどしたものの、JAMの真中行雄会長は「円安で原材料価格が高騰しており、値下げ要請がなくても苦しい経営状況には変わりない」と指摘。「大手の好業績の恩恵は3次、4次の下請けまで回っていない」と語った。
(日本経済新聞4月1日

過去最高が相次いだ大企業のベースアップが製造業の中堅企業にも波及してきた。組合員数が千~3千人程度の企業では、大手とほぼ同額の3千円程度の賃上げが拡がっている。平均回答額で昨年よりも増加するのは確実な情勢だ。

組合員数300人未満の中小企業の賃上げが大企業に比べて厳しいという構図は変わらないが、中堅企業まで賃上げが浸透してきたことは、中小企業への賃上げにとって追い風となる。

日本商工会議所は3月31日に発表した中小企業の賃金引上げに関する調査によれば、43.8%の企業が今年度賃上げすると回答している。これは、昨年12月の調査に比べると10.3ポイント増加した数字だ。大企業が作った賃上げの流れに中小企業の経営者が影響を受けていることがわかる。中小企業の賃上げも昨年を上回ることが期待できそうだ。

ただし、収益が回復せずに賃上げだけが先行すると中小企業の経営は悪化することも懸念される。中小企業も国内外の需要を取り込み、労働生産性を向上させる努力を続けなければならない。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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