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転職・副業の受け入れ先支援 首相「リスキリング拡充」

岸田文雄首相は12日、5年間で1兆円を投じる「人への投資」について3本柱で進める方針を示した。転職者や副業する人を受け入れる企業への支援制度の新設や、働き手のリスキリング(学び直し)に取り組む企業への助成拡大などを挙げた。成長産業への労働移動を促す。
働く人の学び直しについて考えるシンポジウム「日経リスキリングサミット」(日本経済新聞社・日経BP主催)での座談会で表明した。月内にまとめる総合経済対策に具体策を盛り込む。
首相は自らの経済政策、新しい資本主義で「リスキリングの重要性を訴えている」と語った。日本で仕事を移りやすい柔軟な労働市場を整えるには学び直しと合わせて金銭補償を伴う解雇規制の緩和なども検討する必要がある。
首相は1つ目の柱として企業間や産業間の人材移転を後押しするために「転職や副業などを受け入れる企業への支援を新設し拡充したい」と述べた。これまで大企業の社員を招くスタートアップを対象とする補助金制度があったが、従業員数などの条件があった。(日本経済新聞 10月13日)

50代以上の社員を赤字社員から黒字社員に転身させる手段がリスキリングである。DX人材に転身させ、20~30代の社員と同じ土俵で仕事ができるように促してゆく。DXを推進し、労働生産性を飛躍的に向上させないと、会社が沈滞してしまうという危機感に由来する。
リクルートワークス研究所が経済産業省に提出した資料によると、AT&Tは、2008年に「25万人の従業員のうち、未来の事業に必要なスキルを持つ人は半数に過ぎず、約10万人は10年後には存在しないであろうハードウェア関連の仕事のスキルしか持っていない」と把握。13年に「ワークフォース2020」というリスキリングのプログラムをスタートさせ、20年までに10億ドルかけて10万人のリスキリングを実行した。
米国での先行事例を踏まえて、日本でも大手企業が全社員を対象にDX教育を開始するが、教育担当者が不足する中小企業に対しては、受託事業者が登場した。
 そのひとつ、ベネッセコーポレーションは、東京都が実施する「DX人材リスキリング支援事業」の企画運営業務を受託。本事業では、東京都が公募した250社の都内中小企業に対して、ベネッセが国内で展開する「Udemy Business(ユーデミー・ビジネス)」を用いた個別のDX人材育成プログラムを提供している。
 リスキリング支援ビジネスという新たな市場が創出され、これを下支えする補助金や助成金制度も創設された。国が打ち出す新たな政策課題には、ビジネスチャンスが潜んでいる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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