2022/09/22
サントリーホールディングスが地方自治体への社員の出向を始めた。ESG(環境・社会・企業統治)の重要性が高まるなか、民間で得られない公益的な視点やノウハウの獲得につなげる。異なる環境での挑戦で中高年のキャリアを活性化する狙いもある。航空業などでも同様の動きが広がる。海外に比べて限定的だった官民の人材の循環が地方から広がる可能性が出てきた。
高齢化が進む福島県で「県内健康寿命ナンバーワン」を目標に掲げる南相馬市。体重記録アプリを使い減量に挑戦する住民参加型イベントの開催や、年間約300人の喫煙者に禁煙外来を受診させる計画づくりなどに知恵を絞るのが、サントリーからの出向者の下山宏治さん(54)だ。
「サントリーでなじんだKPI(成果指標)管理の手法などは自治体でも応用できる。仕事の優先順位も.分かってきた」と笑顔を見せる。(日本経済新聞 9月14日)
サントリーは「サントリーグループの約束」として「水と生きる」を掲げている。ホームページによると、同社は「人と自然と響きあう」社会をめざし、その手段でもあるサステナビリティ経営の柱に「水とともに生きる」「社会にとっての水となる」「水のように自在に力強く」の3つを据えている。
こうした考え方は必ずしも市場原理と合致しないが、ESGの実践は実務を経験しないとわからない。市場原理のもとで働く会社員にとって、ESGの理屈はわかってもどこまでピンとくるだろうか。
その点、自治体の業務は市場原理で運営されていないことから、出向すれば会社組織とは異なる業務の原理を理解できるようになる。
官民人事交流制度は2001年に施行された。「国と民間企業との間の人事交流に関する法律(官民人事交流法)」に基づき、透明性・公開性を確保した公正な手続きのもとで、公務の公正な運営を確保しつつ、民間企業と国の機関との人事交流の途を開くという趣旨だ。
目的は「民間と国との相互理解を深める」「双方の組織の活性化と人材の育成を図る」。
民間企業と自治体の人口交流も、趣旨と目的は同じである。
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