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政府、キャリア官僚の人材確保に躍起 受験年齢引き下げ対象拡大

人事院は8日、キャリア官僚と呼ばれる国家公務員の総合職の採用試験について、2023年度から一部で、受験可能年齢を「19歳以上」に引き下げる制度見直しを国会と内閣に報告した。22年度中に正式決定する方針。採用試験の申込者数は減少傾向が続いており、政府は優秀な人材の確保に躍起となっている。
 総合職の21年度採用試験の申込者数は1万7411人で、平成以降で最低を更新した。最多だった1996年度の4万5254人(当時は1種)と比べて約6割も減少した。長時間労働など霞が関の「ブラック」な働き方が問題視されていることが影響しているとみられる。   
また、採用活動が早期化する民間企業との人材獲得競争も激化。人事院はその対応として、毎年秋に実施する、専門分野に関係なく受験できる総合職試験(大卒程度試験)の「教養区分」について、23年度から受験可能年齢を現行の「20歳以上」(4月1日時点)から1歳引き下げ、「19歳以上」に変更する。「現在の主なターゲットは大学3年生」(人事院幹部)だが、早期受験を可能とすることで、大学2年生にも対象を広げる。
(毎日新聞 8月8日)

国家公務員総合職の採用試験の受験可能年齢を引き下げるのはキャリア官僚の青田買いだが、それだけ人材確保に困っているのだろう。
国家公務員採用試験の応募者は総合職だけでなく一般職ともに減少傾向を辿り、2022年度の応募者数は過去2番目に少なかった。
人事院は21年度の年次報告書に、人材確保のため採用試験の見直しが必要だと主張したが、これは各省庁の要望を受けたもの。国家公務員試験の実施時期は民間企業に比べて遅いため、前倒しして人材を確保しようと意図している。
河野太郎デジタル担当相は国家公務員制度担当相だった2020年11月、自身の公式サイトで若手国家公務員の退職問題を取り上げた。
同サイトによると、30歳未満の国家公務員が辞職したいという理由は、「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたいから」が男性49%、女性44%。「長時間労働等で仕事と家庭の両立が難しいから」が男性34%、女性47%。さらに「収入が少ないから」が男性40%、女性28%、「今後キャリアアップできる展望がないから」が男性33%、女性23%だった。
この実態を大学生が知れは、応募者が年々減少するのも当然だ。もっと優良な職場はいくらでもある。試験の実施時期を前倒しする以前に、職場環境を改善しなければ早期離職問題は解決しない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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