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パナソニックHD系、昇格試験を廃止 女性管理職増へ

パナソニックホールディングス(HD)の子会社で企業向けシステムのパナソニックコネクトは、2022年度内に係長級と課長級の昇格試験を廃止する。試験に備える研修が長期にわたり、子育て中の女性らに負担が重い。代わりに必要なスキルや能力を明示して希望者が自ら手をあげる公募制を導入し、女性登用の機会を増やす。ソフトウエア中心のビジネスモデルに転換するため、人材を多様化して風土を変える。
年1回の昇格試験をやめる。新卒入社後7年目前後で係長級の昇格試験に参加できるものの、試験課題が提示されてから選考実施まで半年かかる。各職場は業務への影響を抑えながら所属する人材が合格できるよう、休日も使い対策するのが普通だった。
このため子育てとの両立が難しいなどの理由で、選考途中に辞退する女性社員は多かった。
新制度は、管理職に必要なスキルや能力を明示する。新卒入社からの年数で横並びで参加するのではなく、スキルなどを身につける期間を自由に設定し、自分で望んだタイミングで管理職にチャレンジできるという。
(日本経済新聞 8月5日)

昇格試験を実施しなくとも、日頃の仕事ぶりで明らかに昇格の対象になる社員と、明らかに対象から外れる社員は特定しやすい。だがボーダーラインにある社員の評価には評価者の主観が入りやすく、とくに定性評価は公平性を担保しにくい。精緻な評価シートを作成しても主観の排除には限界がある。
とくに評価者がおちいりやすいのはハロー効果だ。ハロー効果とは、ある対象を評価する際に、その対象が持つ際立つ特徴に引きずられるようにして、他の特徴についても評価が影響されてしまうこと。評価を行う日に近い時期の言動ほどハロー効果におちいりやすい。
どんな会社でも評価者研修でハロー効果について注意を促すが、どこまで排除を徹底出ているだろうか。
その点、昇格試験なら公正性が担保され、昇格を見送られた社員も不平不満を抱きようがない。社内政治も介在できない。だがパナソニックコネクトは、試験の準備に十分に取り組める社員と取り組めない社員に分かれる実態を踏まえて、昇格試験を廃止した。
多くの会社で、この問題はプライベートな問題として考慮されていないが、同社は考慮した。同社は「ダイバーシティ・イクイティ&インクルージョン」をキーワードに、2021年4月に「育児をしながら働いている人」「家事・育児にコミットしたい気持ちがある人」を対象とした従業員リソースグループ「Working Parents Connect」を発足させた。「介護両立応援プログラム」も運用している。
社員を生産者としてだけでなく生活者として見ているのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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