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アステラス、職階減らす 意思決定スムーズに 最大6階層に

アステラス製薬は2022年度内にも海外を含む全部門で、社長以下の役職を最大6階層まで減らす。同社では社長を筆頭に、部門長やグループ長など、多くて10を超える役職があった。意思決定が遅れたり、現場のアイデアが上がりにくくなっていたりする課題があった。組織をシンプルにし、意思決定をよりスムーズにする。
本社や研究所、海外のグループ会社を含む全社で役職を整理する。中間管理職を中心とする階層が多い。部門長未満のマネジャーといった中間管理職を減らす。指揮命令系統を明確に決める文化がある米国では「部下が1人しかいないようなミドルボスが何百人もいた」(安川健司社長)という。
職務評価のための「グレード」は残すことを想定する。
安川社長は「新薬開発で勝負するため、イノベーションを妨げる組織の課題を根絶させる」と語る。
21年度から組織の役職を簡素にする取り組みを進めてきた。21年10月には「薬理」や「薬物動態」など機能別に分かれていた研究本部を解消し、細胞医療や遺伝子治療など新薬の研究テーマ別のユニット制に見直した。(日本経済新聞 7月23日)

階層を減らす措置はメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換という見方もできるが、それ以前に階層が多いと意思決定の遅れを招きかねない。情報共有にも限界がある。 
役職にはそれぞれに権限と責任の所在がセットされため、役職が多ければそれだけ権限と責任も細分化される。権限と責任が細分化されれば、それだけ業務判断や意思決定に段階を踏むことになる。
段階を踏まなければ、社内の承認ルールに抵触しかねず、自身の存在を軽視されたと受け止めた幹部も感情を害してしまうのが通例だ。階層組織で優先されるのはスピードよりも感情である。たとえ意思決定のスピードが鈍ることをわかっていても、最終決裁者に辿り着くまでワンランク上の役職に報告や承認願いの提出が繰り返される。
ルールなのでやむをえない。コンプライアンス遵守は社内コミュニケーションにも適用されるのだ。
この通弊を是正するために、昭和の時代からピラミッド型組織からフラット型組織への変更が模索されているが、小規模企業でなければ、フラット型組織の運営は難しい。中堅規模以上の企業は、階層を減らす以外にない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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