Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

中小企業、離職率なぜ高い

なぜ、規模の小さい企業の離職率は高いのか。「待遇や環境が悪いから」と短絡的に考えないでほしい。確かに大手と比べればそれは事実であるだろう。ただ、大量に離職した若者は大手に転職することは少ない。なのに、20代のうちに数度転職すると、規模も地域もあまり変わらぬ企業で落ち着くことになる。当然、待遇も環境お大きく改善するわけではないだろう。なのになぜ定着するのか。ここを考えてほしいのだ。
 一つには、仕事や待遇の相場を知り、高望みをあきらめることにあるかもしれない。しかし最も大きいのは、企業との「相性」なのだと思う。
 大手の場合、何万もの応募者を学歴などでスクリーニングし、その後は3~4回の面接で徹底的に「自社でやっていけるか」、すなわち仕事と社風との相性を見る。そのうえで、入社後に問題があった場合でも、上司のチェンジ、働く地域や配属先の部署変更など、何重にも相性の調整ができる。だから辞めないのだ。
(日本経済新聞 7月12日)

 この記事は雇用ジャーナリスト・海老原嗣生氏の寄稿だが、卓見である。
中小企業では人事異動の選択肢が乏しく、適材適所の配属がきわめて難儀で、本人が「この会社に合わない」と感じたら、さほど迷わずに退職してしまうのだ。しかも大手企業のように「せっかく高い競争率を勝ち抜いて入社した会社なのに、辞めてしまうのはモッタイナイ」という心情も湧きにくいうえに、上司・同僚もさほど慰留しない。
とくに人事異動の選択肢がない場合、上司は慰留のしようがない。自分も同様の転職経験を経ていれば、悶々と在籍しつづける日々を回避してほしいと思うだろう。会社にとっても意欲の低下した社員にダラダラと在籍されつづけることはマイナスで、離職防止策を講ずることに注力しない。経営者も離職率をほとんど気にしない。
そもそも“会社に合わない”とは何に合わないのか。多くの場合は、上司との相性である。新入社員であれば部下が上司に合わせるのが筋だろうが、それは一般論に過ぎず、肌が合わなければどうにもならない。互いにストレスが増していくのだ。
中小企業の雇用とは「そういうものだ」と割り切ることが現実的だろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。