2022/07/05
花王はESG(環境・社会・企業統治)への取り組みを一般社員のボーナスを含めた賃金に反映する制度を導入した。ソニーグループも同様の取り組みを始めた。35兆ドル(約4700兆円)ともされるESG投資が存在感を増し、企業に意識改革を迫る。役員報酬への反映にとどまらず、全社で取り組む体制づくりを急ぐ。
企業や投資家は最近まで自己資本利益率(ROE)や利益などを優先してきた。ただ利益ばかりを追求する資本主義は地球温暖化などで限界を迎えている。気候変動問題や人権問題などの対応が遅れると長期的に事業が振るわなくなり、企業価値も低迷するとの考えに投資家も変わってきた。
米国や欧州ではESG関連の株主提案が急速に増えており、日本でも徐々に増えてきた。2021年には住友商事が一段の気候変動対応を迫る指摘を受け、将来の石炭火力発電の撤退を打ち出すなど、企業の変革を引き出す提案を出てきた。
(日本経済新聞 6月27日)
日本企業の人事評価が成果主義にシフトした時期、モラルをかなぐり捨てて成果至上主義に暴走する組織風土への変化を危惧して、経営理念や行動指針に即した行動を実践したかどうかを評価の対象に加えるケースが増えた。
たとえ成果が出なくとも、模範的な立ち居振る舞いをすれば一定の範囲で評価するという考え方だ。模範的な立ち居振る舞いのうえで成果を出すことが王道だが、傑出した成果を出す社員は往々にして我流を確立するため、ともすれば邪道に走りがちだったのだ。
いわば、その拡大版がESG(環境・社会・企業統治)推進の評価ではないのか。
すでに海外ではこの評価が実施されている。
米アップルは役員賞与の決定について、同社の価値「アップル・バリューズ」とESG分野でのパフォーマンスに連動させている。米クレジットカード大手のマスターカードは、すでに役員報酬をESGの取り組みに連動させて決定しているが、この方式を全従業員のボーナスにも適用する
日本でも、三井住友フィナンシャルグループが今年度から役員報酬にESGの取り組みを反映させる。ESGの目標達成状況によって、ボーナスが10%以内で変動するという。
コーポレート・シチズンシップを米アイ・ビー・エムが宣言したのは1969年。この理念が半世紀を経て人事評価に反映される流れが勃興しているのだが、創業100年を超えるような老舗企業の多くは当然のように実践している。
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