2022/04/21
企業会計では資産とみなされない社員のスキル、やる気などを数字で開示する動きが広がっている。デジタル時代の競争力の源泉は工場や店舗ではなく、革新的ビジネスを創造する「人的資本」という考え方からだ。有望銘柄を先回り買いしたい株式投資家は、社員が幸福かどうか内面まで推し量る。かつての勢いを失った日本企業の再生につながるか。
電子機器メーカーのオムロンは3月、中期経営計画に「人的創造性」を高めるという異色の目標を掲げた。日本の上場企業の多くはアベノミクス以降、株主のもたらす利益を最大化すべく「ROE(自己資本利益率)」を上げることに集中してきた。ところが、風向きが変わりつつある。
オムロンの人的創造性は、同社が1年間に生み出した付加価値を総人件費で割って算出する。新しい経営指標のようだが、計算式をみると、実は一般的な「労働生産性」にほかならない。グローバル人財総務本部長を務める冨田雅彦執行役員常務「昭和の雰囲気が残る『労働生産性』には、人をコストとみて人件費を削るイメージがある。そうではなく、人に投資して付加価値を伸ばしてく」と言い換えの意義を説く。(日本経済新聞 4月12日)
人事に関わる事項に定性的な基準で運用されると、主観的な判断に左右されることが否めない。人事評価が最たる例で、スキルマトリックスを作成しても、評価方法が定量化されていないと、グレーゾーンを払しょくできない。
経済産業省が2020年に発表した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~」は人材育成の数値化を提言した。
このレポートは「重要な人材アジェンダごとに、目指すべき将来の姿(To be) を定量的な KPI を用いて設定すべきである」と提言した。
さらに、デジタル人材の獲得・育成を重要なアジェンダに設定した企業では、経営戦略の実現に必要なデジタル人材の人数等が考えられ、その例として①2021年度までにデジタ ル人材を 3 万人、データサイエンティスト3000人②従業員一人当たりの教育訓練投資額や部門 20 を超えた異動率③毎年500~600 億円の人材投資を行うとともに、将来の幹部候補となる人材 の部門間の流動性—を挙げている。
ではKPI設定の根拠は何か。それもまた計算式で示さないと整合性が取れないが、経営活動はどこまで定量化できるのだろうか。その作業はAIに任せる以外にないが、グレーゾーンのない職場はときに窮屈になるだろう。
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