トヨタ自動車の上田達郎常務役員(労務担当)は27日、東京都内で講演し、工場で働く従業員の賃金体系を大幅に見直す方針を明らかにした。優秀な若手社員を確保するため、年功序列の賃金体系を若年層に手厚い仕組みに変更するほか、現場を率いる「工長」「組長」の肩書を約20年ぶりに復活して若手を率いる責任感を意識付ける。少子高齢化による労働力の減少を補うトヨタの取り組みは、国内製造業が雇用のあり方を見直すきっかけにもなりそうだ。
既に労働組合と制度設計を協議しており、早ければ来年にも導入する見通し。新しい賃金体系では、勤続年数に応じて給料が上がる「賃金カーブ」を若手の取り分が今より多い形に見直す。また、年功による昇給を圧縮して能力給の配分を増やし、業務への貢献が給料に反映されやすくする。年2回の査定で評価し、結果に応じて賃金が変動する。
加えて、工場の現場監督であるグループリーダーと、それを統括するチーフリーダーの肩書について、1997年に廃止された組長、工長という呼称に再変更する方針だ。
かつて「若手社員にとって組長はおやじ、工長は雲の上の存在」(トヨタ関係者)だった。現場の「長」として昔の威厳をよみがえらせ、若手の育成や生産性の向上につなげる狙いがある。(Sankei Biz 1月28日)
かつてどの企業でも部門の責任者には「長」という呼称が付けられていた。たぶん1980年前後からだろうか、フラット型組織への移行などが試行され、「長」が「リーダー」「マネージャー」などへと改名される流れがはじまった。
同時に「さん」付け運動も発生して、上司を役職名でなく「さん」と呼ぶことが珍しくなくなった。90代の中頃になるが、組織活性化を請け負っていた経営コンサルタントに呼称の効能について尋ねたところ、彼はこう答えてきた。
「クライアント企業には上司を呼ぶときも部下を呼ぶときも、すべて役職名で呼ばせています。社長が主任をよぶときには「○○主任」と呼ばせています」。
しかし、少人数の会社で互いに役職で呼び合ったら、いかにも“会社ごっこ”ではないのか。私が口にした疑問に、このコンサルタントは気色ばんだ。
「役職名を呼ばれることで本人に自覚が生まれるのです!」
役職名を呼ばれることに毛恥かしさを感じるようでは、企業人として及第点以下なのかもしれない。
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