従業員への報酬に株式を生かす企業が増えている。株価が上がれば受け取る額も増えるので、働く意欲を引き出せるとの期待があるからだ。その一つが、自社株を従業員に付与するESOPという仕組みだ。
ESOPは英語のEmployee Stock Ownership Planの略。会社の業績や業務成績、勤続年数などに応じて各従業員にポイントを付与し、達成の度合いに応じた数の株式を在職中や退職時に渡す。三菱UFJ信託銀行によると、2014年も武田薬品工業や日本オラクルが導入を決めた。自社株を直接渡すほかに、株価上昇時の利益分だけを付与するタイプもある。
ストックオプション(株式購入権)も広く企業に採用されている。事前に決められた価格で自社の株式を買える権利で、企業が役員や従業員に配る。
株価が一定水準を超えればもうかる仕組みで、届かなければ価値を生まない。東京証券取引所によると、14年に権利を行使した企業は1784社で06年以来の多さだった。ここ2年の株高で、権利を使って利益を手にした人が増えている。
(日本経済新聞2月6日付)
ESOPやストックオプションは、企業の業績に連動した一種のボーナスだ。上場企業の2015年3月の経常利益は、円安や構造改革の効果で前期比3%増となると予想されており、この利益の従業員への分配が期待されている。賃上げやボーナスの上積みに加えて、ESOPなどの株を使った報酬の分配手段のひとつになりそうだ。
ESOPは会社の業績、本人の業務成績、勤続年数などによって分配額が決まるという点ではボーナスと同じだ。しかし、キャッシュではなく株を渡すことによって、株式市場での会社の評価にその価値が左右される点が異なる。従業員が株主と利益を共有し、同じ視点でビジネスに取り組むことを促すことには役立つ。
また、増資によって株数を増やすことは株の希薄化につながり既存株主の利益にならないが、自社株買いをして株主に利益を還元し、買った株の一部を従業員に配布するということであれば、株主と従業員との間で利益を分け合ったといえる。
ESOPやストックオプションは、株の流動性が高い上場企業だけでなく、IPOを目指すベンチャー企業でも今後広まっていくだろう。
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