2021/10/21
SOMPOホールディングスは、傘下の介護事業大手「SOMPOケア」の介護職員約1千人の給与を来年4月に引き上げる方針を固めた。対象の正社員の年収水準を50万円ほど引き上げ、介護施設で働く看護師の平均的な水準並みの450万円程度にする。介護人材の確保や定着に欠かせない処遇改善を急ぐ必要があると判断した。
介護業界は、担い手不足が深刻なのに給与水準の低さが問題視されており、岸田文雄首相も改善に取り組む意欲をみせている。SOMPOケアの判断は、政権の目標を先取りする動きとして注目を浴びそうだ。
SOMPOケアは正社員約1万人のうち、約7千人が介護職。今回給与引き上げの対象になるのはこのうち、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、在宅サービスなどの介護現場で「ケアコンダクター」と呼ばれるリーダー級の職員約1千人で、職務手当を増額する。会社側が9月に労働組合に具体案を示して交渉中で、10月中の合意をめざしている。2022年度の処遇改善に必要な原資は約24億円。
(朝日新聞デジタル 10月12日)
「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン」が昨年11月に発表した「就業意識実態調査」の最新の結果を公表した。介護職員(パートタイマーを含む)2019昨年の平均年収は359万8000円。この金額に対して「大いに不満」が17.3%、「少し不満」が42.3%だった。その理由(複数回答)では、「社会的な平均賃金より低いと思う(45.4%)」や「今の業務量に見合っていない(34.9%)」などが挙げられた。
すでにSOMPOケアは、19年10月にも約10億円を投じて介護職のリーダーらの給与を上げた経緯があり、今回が第2弾になる。第1弾では、競合社に比べて処遇が見劣りし、人材確保が難しかった地域などでは最大で年80万円上げ、対象者の年収が300万円台から約400万円にアップした。
それだけではない。人材確保の手段は採用と定着だが、SOMPOケアは定着促進に向けて研修に注力している。昨年4月から新卒社員は入社後6カ月間、現場に配属されず「SOMPOケアユニバーシティ」という研修施設で知識と技能を学んでいる。
その結果は、離職率に現われている。メッセージとワタミの介護を買収して経営統合を図った2015年当時25%に達していた年間離職率が、今年3月に11%にまで下がった。成長を実感し、業界平均を上回る給与を支給すれば、入社当初の志が潰えることはない。
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