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役員報酬の決定「トップ一任」が55%

会社法の改正で上場企業の報酬決定プロセスの実態が明らかになってきた。外資系コンサル会社のウイリス・タワーズワトソンによると、主要な監査役会設置会社と監査等委員会設置会社で、取締役の個別報酬額などの決定を経営トップに一任している企業が過半を超えることが分かった。トップが自らの報酬を決める「お手盛り」との指摘もあり、役員報酬の客観性確保に向けた対応が求められる。
JPX日経400の採用銘柄の時価総額上位100社のうち、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社の形式をとる80社の2021年3月期の事業報告を対象に集計した。役員報酬の決定方針を取締役会で決め、その概要の開示を義務づけた今年3月の会社法改正後初の調査となる。
調査では、取締役の個別報酬額の決定権限を「経営トップ(会長・社長)に一任」する企業が約55%だった。客観性が高い「任意の報酬委員会に委任」は約18%にとどまった。「取締役で決定」は約26%だった。
(日本経済新聞 8月26日)

 今年6月に改訂された東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードには次のように書かれている。
<取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合 や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである>
 この調査では報酬原則・基本方針では高い評価が下されている。各報酬要素の決定方針や算定方法の説明だけでなく、報酬制度全体を規律づける基本的な考え方(原理原則)を記載する企業が増え、原理原則に沿って、具体的な報酬プログラムの説明を展開して、ストーリー性・一貫性のある、納得感の高い説明となっているという。
 調査結果について、ウイリス・タワーズワトソンのコーポレートガバナンス・アドバイザリーグループ兼経営者報酬プラクティスディレクター・宮川正康氏は「ESGをはじめとしたサステナビリティを巡る課題への対応が投資判断に大きな影響を及ぼしはじめている」と述べたうえで、開示方法の改善を提言している。
「役員報酬を含む非財務情報の開示の重要性がより一層高まっている。他方で、開示すべき情報の多様性・複雑性が増し、その量も飛躍的に増えており、(書き手にとっても読み手にとっても)開示の難しさが問題になりつつある」
 開示のフォーマットが示されればよいのだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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