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コロナで百貨店不振、全従業員の7割に解雇通知

青森県八戸市の百貨店「三春屋」が、新型コロナウイルスの感染拡大などで経営不振になり、全従業員約140人の約7割にあたる約100人に解雇通知を出したことが23日、わかった。従業員の労働組合は「希望退職者を募集するなど努力義務を果たしておらず、不当だ」と撤回を求めている。
 三春屋は市中心部の十三日町地区に立地。地上5階、地下1階で、1、2階が婦人服や雑貨、化粧品のフロア、3階が紳士服や子ども用品のフロアなどとなっている。地下の食料品売り場は買い物客の人気が高い。
 三春屋を経営する「やまき三春屋」によると、通知は11日付で、解雇日は9月10日付としている。
 土谷与志晴社長は読売新聞の取材に対し、「新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち、今秋に予定していた改装計画にも支障が出ている。経費削減に取り組んだが三春屋ののれんを残すため、さらに人件費削減が必要」と述べた。希望退職を募らなかった点には「それほど財務状況が逼迫(ひっぱく)している」と釈明。従業員の再就職は「積極的に支援したい」としている。
(読売新聞オンライン 8月24日)

 会社の終末期に労働組合による解雇撤回闘争は有効なのか。およそ10年前にさかのぼるが、ある労働組合幹部に尋ねたときに、幹部はこう説明した。
「社員は退職金をもらえるうちにサッサと辞めて、次の道に進んだほうが現実的だ。闘争が長引けば会社の信用が低下して、取引先が雪崩を打つように離れていくことも多い。業績悪化が加速して、経営破綻に至ったら退職金はもらえなくなるだろう。だから経営危機に瀕しているときに、組合闘争を行うと憂さ晴らしにはなるかもしれないが、社員の損得勘定を考えれば得策とは限らない」
 要は見極めの問題だ。危急存亡の秋に雇用側と被雇用側との信頼関係が崩壊すれば、買収の対象にもならない。条件闘争に勝利して雇用が維持されば、人件費を削減できず、さらに資金繰りが悪化していく。雇用期間は数カ月延びるかもしれないが、いかにも焼け石に水である。
 かりに労組が経営を肩代わりできるのなら、その道を模索する選択肢もあり得る。だが週末が目前に迫っていれば、まずは次の職を見つけることにシフトしたほうがよい。最優先事項は収入源の確保である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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