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オリエンタルランドで正社員の早期退職募集

「夢の国」でもついに、正社員の雇用にメスが入った――。  
東京ディズニーリゾートなどを運営するオリエンタルランドが、正社員を対象に早期退職を募集していたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。  
対象は満45歳以上かつ勤続10年以上の正社員と嘱託社員。募集期間は2020年10月1日から21年1月31日で、応募した社員は3月31日までに退職した。既存の制度「ネクストキャリア支援プログラム」の対象範囲を拡充させる形で実施した。  
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休園や客数減で、オリエンタルランドの足元の業績は厳しい。21年3月期の売上高は前期比63.3%減の1706億円。最終損益は542億円の赤字で、1996年の上場以来初となる最終赤字に沈んだ。  
危機に対応すべく、オリエンタルランドは20年冬のボーナスの7割カットを発表するなど、コスト削減に取り組んできた。それでも、リストラには踏み込まないと業界ではみられていた。実際、20年7月の21年3月期第1四半期決算説明会では、「大前提として雇用を守りたい」と役員が述べている。 こうした正社員の雇用を守るという方針から一転、オリエンタルランドは密かに早期退職を実施していたのだ。  
ダイヤモンド編集部は、20年秋にオリエンタルランドの社内で開示された「『ネクストキャリア支援プログラム』実施要項」を入手した。
この内部資料では、プログラムの目的について、コロナ禍によって「組織によっては業務量が減少もしくはなくなる事態となり、社内でのキャリアの『自己実現』の可能性が以前よりも難しい状況になっている」と説明。その上で、「オリエンタルランドで培った能力を活かすためのキャリア支援の強化を主旨とし、期間を限定して、本プログラムの対象者および支援金の拡充を行う」と記している。
(ダイヤモンドオンライン 6月1日)

JTBは今期、早期退職などで約700人をグループ全体で削減し、昨年度からの人員削減数はグループ全体の約25%に相当する約7200人におよぶ。
近畿日本ツーリストの持ち株会社であるKNT-CTホールディングスは前期に約1400人の人員削減を実施したが、米田昭正社長は日本経済新聞(6月1日付け)で「次の(感染の)波が来た場合は追加のコスト削減も必要だ」と述べた。近ツリ社員約300人をホールディングスに出向させる人事も検討するという。
旅行、鉄道、航空、ホテル・旅館、飲食、遊戯施設、イベントなどの業種がコロナ感染拡大で大打撃を受け、回復の見通しも立っていない。人の移動を前提として成り立つ業種は、いわば“人流産業”である。人の移動が激減すれば手の打ちようがない。
コロナは人流という新たなビジネスリスクを顕在化させた。ウィズコロナ対応のビジネスモデルを検討するうえでは、人流リスクを踏まえざる得なくなった。
ただ、オリエンタルランドが実施する早期退職は、景況悪化対策の人員削減ではないという。ダイヤモンドオンラインの取材に対して、関係者は「従来から会社にある仕組みで、コスト削減のための早期退職施策ではない」と説明したそうだ。
実情はともかく、1996年の上場以来初となる最終赤字を計上した時期に、早期退職を実施すればコスト削減と見られてもやむを得ない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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